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俺は軽音部。ボーカルは俺。
「きゃー、リュウヤくん、素敵ー!!」
そんな歓声があちらこちらから聞こえると、自分がものすごい人気ミュージシャンにでもなった気分になる。
「わー、おつかれー」
「ありがと」
初菜ちゃんは舞台裏でパチパチと拍手を鳴らす。
「リュウくん、今日はいつもの2/1倍かっこよかった!」
「それ普通に2倍でいいんじゃない?」
と、こんな風に独特の言い回しで感想を述べてくる。
「あ! 歌はいつもの0.5倍悪かったよ!」
「ややこしいな、普通によかったって言ってよ」
独特すぎてたまに何を言ってるのかわからないときもある。
「この調子でいったら、来年の文化祭にはこの体育館も0.1mmの隙間も入らないくらいぎゅうぎゅうになるかもね!」
「狭すぎるよ。もう少しゆとり持った方がいいと思うよ。人気なのは嬉しいけど」
しかし、このちょっとずれてる感じがたまらない。
「というわけで、次わたしの番ね。応援してね!」
初菜ちゃんのバンドはステージに。その途端、体育館は一気に満員になる。人気の差が違うよな。
「みんな、盛り上がってるー!?」
「ハツナー!!」
歌を歌ってるときの彼女は、普段の天然な感じが一掃される。
俺ももっとがんばろう。0.1mmの隙間は無理だが。
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