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第10話 ダイエット宣言
復讐を誓った夜から、私の生活は一変した。
「私、痩せることにしたから!」
朝食の時間、私は席に着く前に大きな声で宣言した。
呆気にとられる両親と使用人たち。
そんなみんなをよそに、私は席に着くと目の前にある豪華な朝食の中からパンを一個だけ食べ、その後グラスの中の水を一気に飲み干した。
そしてナプキンで口を拭き、席を立とうとするとルグロ伯爵から止められた。
「おいおい、フルール。それだけしか食べないのかい? どこか身体の具合が悪いんじゃないか?」
「どこも悪くないわよ。むしろ、今までの食生活が身体に悪影響を及ぼしているって気づいたの。それだけのことよ」
「は?」
ポカンと口を開けて私を見つめるルグロ伯爵に、「ごちそうさまでした」とだけ言うと私はその場を後にした__。
私が部屋に戻ると、誰かが私の部屋を叩く音がした。
トントン
「フルール様。アメリでございます。失礼してもよろしいでしょうか?」
「ええ」
「失礼いたします」
アメリはそう言うと、静かに私の部屋に入ってきた。
「どうしたの?」
私がそう聞くと、アメリは少し言いにくそうに私に尋ねた。
「あの……フルール様。城の夜会で何かあったのですか? よろしければ、このアメリにお話していただけないでしょうか?」
アメリは、深い皺をさらに深くしながら心配そうにしている。
私は、余計な心配を掛けたくないと一瞬話すのをためらったが、小さな頃から私のお世話をしてくれているアメリにだけは真実を話しておこうと思った。
「実はね、夜会でリシュ様に会ったの」
「まぁ! あのリシュ様ですか? いつも周りを大勢のお嬢様方に囲まれているという?」
「ええ……。それで、夜会でリシュ様にダンスのお誘いを受けて……」
「あらあら! すごいじゃありませんか、フルール様!」
アメリは、私の話を最後まで聞かずにニコニコとして手を叩いた。
「最後まで話を聞いてアメリ」
私はアメリを制すと、話を続けた。
「すごく嬉しかったわ……。でもね、全部お父様が手を回したことだったの。リシュ様は……私みたいな大食いで太った女は好きじゃないって……ううっ……」
城でのリシュの言葉の数々がまた蘇り、私の目から悔しさのあまり涙が溢れた。
「まぁ! なんて酷いことを……」
私の話に、アメリの顔がみるみる悲しそうになる。
泣いている私の背中を優しくさすりながら、アメリは何かを決意するように言った。
「このアメリ、寿命が尽きるまでフルール様のお役に立ちましょう。フルール様のダイエットのサポートをいたします。山奥にルグロ家所有の別荘がございます。そちらに移り住むのがいいかと。こちらでは旦那様や奥様の目がありますし」
「別荘……?」
それからすぐに、私はアメリと数人の使用人たちと一緒に山奥の別荘に移り住むことになるのだった……。
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