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第13話 山奥でダイエット
「ちょっと! 急にそんなこと言われても困るわ!」
私の抗議も虚しく、パトリスはお構いなしにダンスを続ける。
パトリスに引っ張られるようにしてターンをするたび、私は転ばないように必死になっていた。
しばらくそんな状態が続いていたが、やっとパトリスの動きが止まった。
「はぁ、はぁ……疲れた……」
私は立っていることが出来ず、息を切らせてその場にしゃがみ込んだ。
しかし、パトリスは全く息を切らすことなく平然とした顔で私に言った。
「全然ダメだな。不合格」
「うっ……」
息切れが酷く、言い返すことも出来ない私にさらにパトリスは容赦ない言葉を浴びせる。
「とにかくその身体をまずなんとかすることだ。ダンスを教えるのはそれから。半年……いや、一年くらい掛かるか? お前が本気で痩せるなら俺も本気でお前にダンスを教えてやるよ」
悔しくてパトリスを睨み返すと、パトリスは目を細めて面白そうに笑った。
「いいねぇ、その意気だ。早くリシュのやつを見返してやろうぜ。ははは」
(意地悪男! ムカつくけど……でもパトリスのリードはリシュなんて目じゃなかった……私一回もパトリスの足踏まなかったし……やっぱりすごい人なのかもしれない)
「私が痩せたら……」
「ん?」
「私が痩せたら、パトリスもそのボサボサの髪やよれよれの服装をなんとかしてよね! 元貴族ってとこ、見せてもらうわ!」
「……ぷっ……あはは! そうだな。その時は俺も綺麗に着飾ってお前に会いに来てやる。楽しみにしてろよ」
***
この会話の後から、私はアメリや他の使用人たちの協力の元で必死にダイエットを頑張った。
早起きをし、山道を登ったり降りたりの散歩。
散歩から帰り、パンとサラダとスープという質素な朝食を時間をかけて食べる。
そして、午前中は使用人たちと共に屋敷の掃除や修復作業。
質素な昼食とデザートとして果物を少々。
午後は作業に加え、アメリと一緒に麓の街まで山道を登り降りして買い物。
帰ると夕食の支度を手伝い、パンとサラダとスープにもう一品肉か魚料理を加えてゆっくり時間をかけてそれを食べた。
今まで食べていた量から比べ、かなり食べる量を減らしたのですぐにお腹が空いて辛かったが、リシュを見返してやることだけを考えて早めにベッドに入り布団を被った……。
そんな山奥の別荘での生活を一年ほど続けた私は、なんと元の体重の半分ほどの体重になっていた__。
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