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第14話 一年ぶりの再会
ダイエット開始から一年。
見事ダイエットに成功した私は、今日から晴れてダンスの練習に取り掛かることになった。
初めての夜会の時のように、アメリは私の髪を夜会巻きに結い綺麗にお化粧を施してくれた。
ドレスは、オーダーメイドしたピンク色と白色を基調にした豪華なドレス。
もちろんコルセットはしっかりと締め、ウエストの細さが強調されている。
より品よく見せるため、アクセサリーはパールのイヤリングとネックレス。
ドレスの色に合わせた白色のパンプスを履き、最後の仕上げに私はピンク色の花を髪に飾った。
ピンク色の花……。
「可愛いよ!」
あの屈辱の夜、泣いていた私の髪に少年がそう言って飾ってくれた花。
屋敷に持ち帰ってアメリに調べてもらった花は、ラナンキュラスという名前だった。
私はそれからというもの、ピンク色のラナンキュラスを心の支えにしてダイエットに励んできた。
そして今、ダイエットに成功し生まれ変わった私は、初心を忘れないようにお守りとしてこの花を髪に飾ることを決めたのだった。
あの少年への感謝と共に……。
「へぇ……驚いたな」
ラナンキュラスの花を見て思いにふけっていた私は、ドアの入り口から聞こえた声に後ろを振り向いた。
そこには、細かく美しい刺繍がされた黒いゴシック調の貴族服を身にまといシルクハットを被った男性が立っていた。
シルクハットから見えるブロンドの短髪。
少し挑戦的な切長の目。
スラっとした鼻筋に形が整った綺麗な唇……。
(ん? どこかで見たことがあるような……)
「誰?」
私が思わずそう尋ねると、その男性はシルクハットを取るとそれを胸の前に置き、かしこまってお辞儀をした。
「フルール様、お久しぶりです。パトリスでございます。約束通り、会いに参りました」
(!!!)
「パトリス? 嘘っ……。あなたってこんなにイケメンだったの?」
つい思っていることが口に出てしまうと、それを聞いたパトリスはお辞儀をしながら肩を震わせた。
そして、とうとう堪えきれなくなったように笑い出した。
「くくっ……あははは。久しぶりに散髪して髭も剃ってこんな貴族の格好をしたんだが。まだ俺も捨てたもんじゃねーな」
パトリスはそう言って笑いながら私に近づくと、私の前に跪き私の手を取った。
「私と踊っていただけますか?」
パトリスの自然な身のこなしに、私は思わず頬を赤らめて答えた。
「はい……」
そんな私を見て、パトリスはふっと微笑むと私の手の甲にキスをした。
そして、ますます顔を赤くする私を優しくリードしながらダンスを始めた。
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