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第15話 作戦始動
滑るようにステップを踏むパトリスにリードされながら、私はその動きについていけるようになっていた。
「ワルツは三拍子だからリズムを取りやすいだろ? ワンツースリー、ワンツースリーと心ん中でカウントしながら踊るんだ」
「ええ。ふふふ。なんだか楽しくなってきたわ」
「その調子だ。それにしても……よく頑張ったな。見違えた」
パトリスの優しい言葉に思わず涙が出そうになったが、私はそれをぐっと抑えた。
「当然でしょ! リシュ様を見返してやるんだから! 私も約束通り痩せたんだから、パトリスも本気でダンスを教えてちょうだいね」
私の変わらぬ思いに、パトリスは一瞬驚いた顔をしたがすぐに面白そうに笑った。
「はは。俺もやる気になってきた。お前を夜会で一番ダンスがうまい令嬢にするためにびしびし鍛えてやるからついて来いよ!」
「望むところよ!」
私とパトリスは笑い合い、それぞれの目的のために動き出した__。
☆
ダンスを習い始めてしばらく経った頃、パトリスが何かを手にしながら私のいる部屋に入ってきた。
「フルール。来週、ある屋敷で行われる夜会に俺たちも出席するぞ」
「えっ……」
「これが招待状だ」
私は、テーブルに置かれた招待状を手に取るとパトリスに尋ねた。
「こんな招待状どこで手に入れたの?」
「マノンとアメリのメイド仲間があちこちの屋敷にいるだろ。伝手がたくさんあるってことだ。これから時折、夜会で派手なダンスを披露してお前を印象付ける。きっとそれを聞きつけたリシュはお前に興味を持つに違いないだろ?」
(!!!)
ついにリシュを見返す本格的な作戦が動き出す……。
そう考えると知らず知らず、ぐっと拳を握っていた。
肝心のリシュといえば、あの件でルグロ伯爵にアルベール公爵を紹介してもらい、自分のアピールに必死になっているらしい。
きっとアルベール公爵の娘、ルイーズに気があるのだろう。
(ふん。精々ルイーズ様に気に入られるように頑張りなさい。あなたが自分の欲しいものを全て手に入れた時、私がそれを全部奪ってあげる……)
手元の招待状を見ながら、私は改めてそう心に誓った……。
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