121人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
第17話 リシュとの再会
夜の帳が下りる頃。
満天の星と満月の月明かり。
アルベール公爵邸では盛大な夜会が開かれていた。
私は、この日のために用意したドレスやアクセサリーを身につけ、いつもよりさらに豪華にドレスアップしていた。
リシュと顔を合わせることを考えると、緊張で手が震える。
そんな私を、パトリスは落ち着いた声で安心させてくれた。
「俺と一緒にいれば大丈夫だ。計画通りにな。まぁ、お前はハニートラップなんて仕掛けられないだろうから。リシュのほうを何回かチラ見するくらいで十分だ」
「わかってる。絶対にリシュ様の気を引いてみせるわ」
「よし。行くぞ」
パトリスはそう言うと、私に右腕を差し出した。
私とパトリスがダンスホールに登場すると、ダンスホールにいる客たちが一斉に騒ぎ出した。
「なあ。あの髪に挿したピンクのラナンキュラス! あれ、フロランスじゃないか? なんて美しいんだ」
「きゃあ! パトリック様!!! 今宵も素敵だわ!」
噂の二人組に、観客たちは歓喜の声をあげた。
そんな中、私がダンスホールの周りをぐるりと見渡すとこちらを見ているリシュと目が合った。
(いた!!!)
私は、少し動揺して咄嗟に目を逸らしてしまった。
あれから随分と時間が経ったとはいえ、まだ私の中では深い傷が癒えていないようだ。
「リシュの奴、お前に釘付けになってるみたいだな」
パトリスは、私の耳元に顔を近づけてそう言うとさらに私の腰に手を回した。
「ちょっと! 何するのよ」
「リシュに見せつけてやってるんだ。ほら、見てみろ。あいつソワソワしてるぞ」
私がそっと横目でリシュを見ると、リシュは少し苛立っているような顔をしていた。
「これで何回かチラ見すりゃ、効果てきめんじゃないか?」
面白そうに笑って話すパトリスの態度で、私は落ち着きを取り戻していた。
「ふん。本当にリシュ様って女好きなんだから!」
パトリスとそんなやりとりをしているうちに、リシュの隣にルイーズが並んだ。
先程の苛立っている表情は消え、リシュはルイーズと爽やかな笑顔で話をしている。
そんな二人を私が複雑な気持ちで見ていると、クラッシックの生演奏の音楽がダンスホールに流れ出した。
私とパトリス。リシュとルイーズ。
どちらも観客からの熱い視線を向けられながらのダンスが、いよいよ始まったのだった。
最初のコメントを投稿しよう!