第2話 いざ夜会へ

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第2話 いざ夜会へ

 一週間後。  夜会の一時間前、私は用意されたドレスを着るためにコルセットを巻いていた。 アメリが、ぎゅうぎゅうと力を込めてコルセットの紐で私の腰を締め上げていく。 「うっ! ちょっと待って! 苦しい!」 「ドレス姿を綺麗に見せるためです! 我慢してください、フルール様」 「やめて〜! これじゃお城の美味しい料理が食べられないじゃない!!!」  私は、息も絶え絶えにアメリに懇願した。 そんな私を見て、アメリは諦めたようにため息をついた。 「はぁ……そうですね。フルール様がひもじい思いをするのは気が引けます。コルセットは緩めておきましょう」 「ありがとう。どんな料理が出たか報告するから楽しみに待ってて」 「フルール様……。いいですか? 夜会というのは、素敵な殿方と出会う場なのですよ。美味しい料理だけを食べて帰ってくることがないようにお願いいたします」  私にドレスを着せた後、アメリは私のブロンドの髪を夜会巻きに結い上げ、化粧を施し、最後に豪華なネックレスをつけてくれた。 「まぁ、なんて可愛らしい。フルール様のブロンドの綺麗な御髪にピッタリな水色のドレスですね。豪華なダイヤモンドのネックレスも素晴らしいです」 「そう? えへへ……」  実はみんなには内緒だが、私には夜会の料理の他にも楽しみなことがあるのだ。 それは、密かに憧れている人に会えるかもしれないということだった。  リシュ・メナール 二十歳。 メナール子爵家の嫡男であり、私の憧れの人である。 三年前、父であるルグロ伯爵に連れられて行ったパーティーで初めてリシュを見かけ、それ以来彼に憧れ続けている。 栗色の髪、青い色の目、スッと通った鼻筋、いつもにこやかに笑っている口元……。 その全てが、フルールにとって魅了的だった。  (嗚呼、リシュ様と早くお会いしたいわ……。ダンスのお相手もリシュ様がいい。とにかく、お会い出来るのが楽しみだわ)  トントン  リシュのことを考えて頬を緩めていると、私の部屋に従者が入ってきた。 「フルール様、馬車の準備が出来ました」 「わかったわ」  私が自分の部屋から出ると、玄関の入り口に続く廊下に使用人たちが並び、私を見送ってくれる。 玄関にはルグロ伯爵と母サンドラが立っており、私の姿を見て感嘆の声を上げた。 「おお、フルール! とても綺麗だよ。夜会を楽しんでおいで」 「とても素敵だわ。これならダンスのお相手も引く手数多(てあまた)ね」  そんな二人の言葉を聞いて、私はドレスの端を少し持ち上げてお辞儀をした。 「行って参ります。お父様、お母様」  私はそう言うと、ドレスをひるがえして城で行われる夜会に向かった__。
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