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第3話 憧れの人
屋敷を出てからしばらく。
馬車が速度を緩めて、ゆっくりと止まった。
馬車の窓から外を見上げると、そこには大きな城がそびえ立っていた。
ここデセール王国の城には、国王様、王妃様、そして三人の王子様が住んでいる。
聞くところによると今回の夜会は、王太子であるオリバーのお披露目でもあるらしい。
私と同じ十七歳のオリバーだが、きっと多くの令嬢たちの注目の的に違いない。
その点、私はオリバーには興味はなくリシュに会えればいいとだけ思っているので、他の令嬢たちとのバトルに巻き込まれることはない。
そんなことを考えてほっと息を吐いていると、従者が私に言った。
「フルール様。私はこちらでお待ちしておりますので夜会をお楽しみください」
「ええ。ありがとう。行ってくるわね」
私は馬車から降りると、夜会が行われている城の中に入った__。
☆
城の使用人に案内され、私は夜会が開かれている部屋に足を踏み入れた。
(うわ〜!)
高い天井に、煌めく豪華なシャンデリア。
高価だと一目でわかる調度品の数々。
クラッシックの生演奏と、それに合わせて踊っている貴族たち……。
見るもの全てが、私には新鮮だった。
感動して辺りを眺めていると、どこからかいい匂いが漂ってきた。
ちょうどお腹も空いてきた私は、リシュやダンスのことは後回しにして、真っ先にそこに向かった。
縦に長いテーブルの上には、様々な料理が並んでいる。
(自分の屋敷の料理も最高だと思ってたけど、やっぱりお城の料理は一段とすごいわね……)
あれもいい、これもいい、と目移りしてしまうが、なんとか食べたいものをお皿の上に全て乗せた。
「これでよし! さて、お味は……もぐもぐ……ん〜! 美味しい〜!」
ほっぺたが落ちそうなくらい美味しい料理に感動しながらも、私はひたすら料理を食べまくっていた。
そんな私を見た老紳士が、私の食べっぷりを見て声を掛けてきた。
「お嬢さん、いい食べっぷりだねぇ。最近の令嬢は少食でいかんと思っていたが。あんたみたいな令嬢もいるんだな。ガハハ」
「あ…もぐっ……お褒めいただきありがとうございます」
老紳士の声が大きかったためか、周りにいる他の貴族たちが私を興味深そうに見ていた。
私と同じ年頃の令嬢たちも、持っている扇で口元を隠しながらヒソヒソと話していたり、中には笑いを堪えられずに笑っている者もいる。
そんな中、私の後ろから再び声を掛けてきた人がいた。
「フルール様。お久しぶりですね」
「はい? んっ! げほげほ……あ、あなたは!」
私は、驚きで食べ物が喉につかえてむせそうになるのを必死で抑えた。
なんとそこには、私の憧れの人であるリシュが立っていたのだった。
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