第I話 夜会の招待状

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第I話 夜会の招待状

 フルール・ルグロ 十七歳。 由緒正しきルグロ伯爵家の伯爵令嬢である。 一人娘ということもあり、小さい頃から家族や使用人たちから可愛がられて育った、いわば箱入り娘だ。 趣味は食べること。 かなり豊満な体型をしているが、両親共に同じような体型をしているため特に気にせずに毎日を過ごしている。  そんな私に城から夜会の招待状が届いたのは、ちょうど私の十七歳の誕生日だった。 「フルール様! お城から夜会の招待状が届いております!」  誕生パーティーの最中、老メイドのアメリがそう言って部屋に飛び込んできた。 「これ、アメリ。今はフルールの誕生パーティー中だ。慎みなさい」  父親であるルグロ伯爵が、アメリをたしなめた。 「申し訳ございません。ついにお嬢様にもこの日が来たかと、嬉しくなってしまいまして……」  アメリはそう言うと、エプロンからハンカチを取り出して涙を拭った。 「もぐっ……夜会の招待状? もぐっ……見せて……もぐもぐ……」  大きくカットされた誕生日ケーキを食べながら、私はアメリから夜会の招待状を受け取った。 「ふ〜ん、もぐっ……一週間後なんだ……もぐもぐ」  ケーキの横にあったシュークリームにも手を伸ばして、私は招待状の中身を確認した。 「フルール、食べている時に話をするものではありませんわ。お行儀が悪くてよ」  母親のサンドラが私に注意をするも、私は気にせずに言った。 「美味しい料理のせいよ……もぐもぐ……お母様も早く食べないと料理が無くなるわよ」 「それもそうねぇ。もぐっ……美味しくて何個でも食べられるわね……もぐもぐ」  一心不乱に料理を食べている私と母サンドラを、ルグロ伯爵は嬉しそうに見つめている。 ルグロ伯爵は、たくさん食べる女性が好みなのだ。 「どんどん食べなさい。今日はフルールが生まれたことと、夜会に招待されたことのダブルのお祝いだ」  そう言ってルグロ伯爵がパンパンと手を叩くと、厨房からさらに追加の料理が運ばれてきたのであった……。
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