今だけ、好きでいさせてください

1/5
150人が本棚に入れています
本棚に追加
/50ページ

今だけ、好きでいさせてください

 お兄様がみえた次の日、ラウル様がおひとりでみえた。  今日は騎士服ではなく、町民とそう変わらないお召し物で。  いや、騎士服に包まれていた時には隠れていた色気が、ダダ漏れですけど。  日頃の訓練の賜物か、引き締まった体に見事な腕の筋肉。  前開きのシャツから見える鎖骨が、胸元が……59年間男性の身体に縁が無かった私には刺激が強すぎる。のぼせて鼻血が出そうだ。 「あの……今まで第二王子の護衛をされていたのですよね。それなのにどうして今日は……」  月イチという話がまだ伝わっていなかったのだろうか。 「俺の依頼が入ったがために、マリーさんの普段の仕事が遅れてしまってはいけないからな。手伝えることがあれば、何でもするから。あと、またプレゼントの選別をハージュさんに依頼したいのだが、付き合ってくれるか?」  そうだった。  お会いできて浮かれていてはダメ。  ラウル様には意中の方がみえるのだから。  午前中の仕事を終わらせ、先にお使いの内容を取りまとめる。 「おばあちゃん、いってきます」 「えぇ、気を付けてね」  昨夜おばあちゃんへ、私が王女のハージュリアだと兄にバレてしまった事を伝えた。  私が連れ戻されるわけでもお咎めがあるわけでもなさそうなので、おばあちゃんは安心したようだ。  そして、お兄様が私に好意を寄せていた事に以前から気がついていたらしく、私がひどい目に合ってしまうのではないかとも心配してくれていた。  ふたりしてお兄様を騙していたわけだから、おばあちゃんにお咎めが無さそうなので私も安心した。
/50ページ

最初のコメントを投稿しよう!