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行く当ては、ある。
私が5歳で家族に見捨てられるまで、私のお世話をしてくれていたマリー。
私はいつも「おばあちゃん」と呼んでは身内のように慕っていた。
私の輿入れが公表されて、お祝いのお手紙をくれた唯一の人。
その手紙があったからこそ私は見知らぬ土地に、勇気を出して嫁ぐことが出来た。
何度も何度も手紙を読み返し、おばあちゃんの名前を指でなぞった。
だから住所だって覚えている。
私が輿入れして半年経った頃、おばあちゃんははるばる国境を超えて私に会いに来てくれる途中事故で亡くなってしまい、残念ながら13年ぶりに会うことは叶わなかった。
それが今日、叶うのだ。
あぁ。もっと早くに会いに行けば良かったと悔み願っていたことが、こんな形で実現するなんて!
雪がチラつく中、私は記憶する住所を訪ね1軒の民家に到着した。
「こんにちは。マリー・ブライアンさんのお宅ですか」
その声に反応して、椅子に腰掛けていた女性がゆっくりこちらを見た。
「そうよ。私がマリーよ。……あなたは誰だったかしらね」
少し老けてしまってはいるが、記憶の通りの優しい笑顔。
「私、こんな髪色でこんな格好をしていますが……ハージュリアです、おばあちゃん」
おばあちゃんは目を見開き「ハージュ様!?」と立ち上がり、こちらへ駆け寄ろうとする。足が悪いのか、ふらついて転倒しかけたので慌てて支えに行った。
「お久しぶりです、おばあちゃん」
「あぁあぁぁ、ハージュ様!こんなに大きくなったのに…こんなにやつれて!」
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