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「みっつ。これは私が提案したものなのだが……」
ささくれが目立つ小さなテーブルに小瓶を置く。
「この薬を飲んで、自害されよ。義姉上はそれだけの事をしてきたのだ。いや、何もしてこなかったというべきか」
私が期待外れの王妃だったことを言っているのだろうか。
前国王である私の夫の命を守れなかった事を言っているのだろうか。
それとも……夫との結婚生活の事を言っているのだろうか。
「そもそも、兄上に嫁いだ時点で貴方の人生は終わっていたのだ」
夫が生きていた頃は、義弟として何度も励ましてくれたロバート。
やはり貴方もそう感じていたのね。
「御年59歳といえども貴方は女性であり、まだ美しい。このまま祖国へ帰ったところで……その素晴らしい金髪のおかげできっと、ひっそりと生きることは出来ず辛い生活を強いられるだけだ。どうか清い身のままで、その生涯を終えてください。これは義弟としての優しさです」
明日返事を聞きに来ます、と言い残し、義弟と騎士たちは去っていった。
カツーン、カ、カツーン……と足音が遠くなる。
バターン、と重い鉄の扉の閉まる音が最上階まで響く。
明日なんか待たなくていい。
私はテーブルの上の小瓶を手に取る。
18歳でこの国の第一王子の正妃になり、35歳でこの国の王妃となった。
自分なりに正妃として、王妃としての勤めを果たせられるよう努力してきたつもりだが、生前夫は全く私を妻として認めてはくれなかった。
夫は3カ月前に魔物討伐の遠征先で重傷を負い、帰還することなく亡くなった。それも、私のせいで。
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