毎度、バレていないかヒヤヒヤです

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「お前、リアなのだろう」  ここに来て半年が経った頃の暑い日の夕方。  お兄様がおひとりで訪ねてみえるなんて珍しいなと思っていたら、冷たい紅茶を出す私に向かって言い放った。  咄嗟におばあちゃんの所在を確認する。  おばあちゃんは、畑の手入れをしていた。  お兄様もそれを確認してのセリフだったのかもしれない。 「何のことでしょう…」平常心を装おうにも声が震える。 「今正直に言えば、俺はお前を咎めない」  ぐっ…。  そう言われてしまうと、このまま隠し通すことは得策ではない気がしてくる。 「俺の心を持て遊んだ罪も……許してやる」 「何の話ですか、お兄様」  あ、しまった。心の声が漏れた。  私の素ツッコミにお兄様は驚いた表情を見せたが、大きなため息とともに決まり悪そうな表情に変わった。 「どうして今頃わかったのですか?この3カ月間、ずっと気がつかれていませんでしたよね?」 「マリーに孫娘は居ない。母様がそう記憶していた」  お兄様は紅茶をひと飲みし、いつもの表情に戻る。 「では、私がプライザ王国ではなく、ここにいることをお母様は……」 「もちろん知っている。食事の席で俺がマリーの話題を振ったからな」  さぁ…っと血の気が引いた。  連れ戻される、そう思った。 「父様が真っ先に気付き、大笑いしていたよ。それで伝言を託された。『約束通り1年で教養を身につけて帰ってくるように』だと。あんな上機嫌な父様、初めて見たよ」  私も父が笑う姿など、見たことが無い。  だけど、父は面白いことが好きなのだ。保守的だったこの国に、異文化や文明を積極的に取り入れようとしていることもこの国の王である父の方針。その上欲深で、自分の利益にならない者は例え恩人であっても即刻切り捨てられる人だ。  私が結婚するまで父の存在はただ怖いだけで、結婚して国外に出てから父の性格を知った。
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