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「あと、プライザ王国では必ず第一王子の正妃を狙えと言われた。第一王子の領土で、上質な『大地の祈り』の石が採れる鉱山が見つかったと。お前には使いこなせない石だが、何とかユーヴァルトがその発掘権を得られるようにしろとの事だ」
あぁ、やっぱり見つかったのか。
『大地の祈り』は緑色の天然石。この石を使い大地を浄化すると空気は澄み、土壌は肥え、水脈が豊富になる。
この魔法はユーヴァルトの魔法使いしか使えないが、石としての価値が高いので他国でも強く所望される。
前の私は「妻のおねだりだ。聞いてもらえ」と父に強く言われ、無理にねだった結果、夫から反感を買った。
「この鉱山での採掘は禁止する。この地域の自然を壊しかねない」
その決定に父は激怒し、プライザ王国から一切手を引いた。
……私はこうして夫に見限られ、プライザ王国に取り残されたのだ。
やり直しの人生では父の言いなりになるのは嫌だ、そう思えるようになった。
だからと言って、第二王子の正妃を望むつもりもない。
第二王子のロバートは優しくていい人だ。
いつも出来損ないの王妃である私を立ててくれた。
きっと私自身を愛して幸せにしてくれる。
だけど、どうしてもロバートのそばにいる自分が想像できない。
それにこれは、愚妃と言われる人生を回避するチャンスなのだ。
危機的状況の中、私の提案で更に苦しめてしまった国民を、壊してしまった自然を、修復不可能にしてしまった国際問題を、魔物の餌食にしてしまった騎士達を、救う事が出来るのは今の私だ。
例え夫との愛のない生活を強いられても、プライザ王国の人々を幸せに出来るのならそれでいい、それが良い。
だから、期日までは……。
「お兄様、この事をラウル様はご存じなのですか?」
「いや、教えるつもりはない。散々お前に会う口実を作らせておいて実は妹でしたなんてみっともな過ぎるからな。お前に振られたことにしておくよ」
妹と言われ、喜ぶ自分に気がついた。
私はもう家族として扱ってもらえないと思っていたので、嬉しいのだ。
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