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手に取った小瓶に、小さく文字が書かれていることに気がついた。
『お力になれなくて申し訳ございません』
わかっているわ、ロバート。
騎士と同行していた手前、あのような態度を取らなくてはいけなかったのね。
貴方がいてくれたから、私は夫との冷めきった夫婦生活も監獄のような王宮生活も耐えてこられたのよ。
最後に貴方が差し伸べてくれた手を振り払ったのは私。後悔も恨みも無いわ。
私は小瓶の栓を抜き、一気飲みする。
ほどなくしてクラッと眩暈がしてきた。
良かった、苦しむような毒では無かったのね。
私は3カ月間身体を痛めながら眠った、硬いベッドに身を委ねる。
朦朧とする意識の中、自分の人生を振り返る。
私は何のためにこの国に来たのだろう。
このプライザ国の国民を苦しめるため?
夫であるルドルフ前国王を死に追いやるため?
少なくとも、私の幸せの為ではなかった。
やっとこの長年の苦しみから解放されるのだ。
嬉しくて涙がこぼれる。
お願い、誰も私を起こさないで。
このまま、安らかに眠らせて……。
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