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帰り道も30分、今度は私の話をしながら二人で歩いた。
私は王宮での話をするわけにいかないから、経験と嘘を織り交ぜながら話す。
父と母は忙しい方で、5歳までおばあちゃんに育てられた。
遠方へ引っ越すことになりおばあちゃんと離れたが、9カ月前、国外へ行くという事になったので私はおばあちゃんの元で暮らすことにした。
姉が食事の支度、私が掃除洗濯をしてきたので二人とも手荒れが酷いのだ、とも。
「なるほど、手袋を外さないのは手荒れのせいか。今度おすすめのクリームを持ってくるよ」
「いえいえ、そんな。私の手荒れ如きに勿体ないです!」
ラウル様の目の前でクリームを塗るとなると、手袋を外さなければならなくなる。
『緋の誓い』の事を存じていなくても、手の甲に石がはまり込んでいたら驚くに違いない。
そして、またあっという間に家に着いてしまった。
少し遅くなってしまったので、購入した荷物を家に置いたらラウル様はもう帰られてしまう。
仕方ないよね。
騎士様はきっとお忙しいだろうし、購入されたプレゼントもお届けに行かなきゃいけないだろうし。
荷物を置き、ラウル様を見送る。
「今日もありがとうございました。とても楽しかったです」
「そうか、それは良かった。それで、これ」
そう言ってラウル様が私に小さな紙袋を手渡す。
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