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「何でしょう、これは」
中身を出してみると、小さなオレンジ色の石がついたシンプルなイヤリング。
「これは……あの露店で購入されたのですか?」
「そう、ハージュさんに似合うと思って。今日のお礼だよ」
「お礼って……私にくださるのですか!?」
お礼だなんて、むしろこちらがしなくてはいけないぐらいなのに。
「うん。実はあの露店、王都で貴族御用達の宝石店のデザイナーが趣味で作った物を出品しているらしくて。1点物の貴重な品だった。ハージュさんがあの店に気がついてくれたから、良いものが買えたんだ。ありがとう」
「いえっ!ありがとうございます!嬉しいです…」
ラウル様の嬉しそうな表情。
そのお顔が見られただけで充分なのに、こんな素敵なプレゼント……。
どうしよう。
一緒にいればどんどんラウル様の事が好きになっていく。
あと半年もすれば、私はプライザ王国に嫁ぐというのに。
この気持ちのまま結婚してはいけない、そう思う。わかっている。
ラウル様のお心に、無理矢理入り込むつもりもない。
告白するつもりもさらさらない。
だけどせめてあと半年の間だけ、自分に正直に生きていたい。
必ず、必ず半年後には何があってもこの気持ちを切り捨てるから。
だから、だから……ラウル様を好きだというこの気持ちを、実らない恋、実らせてはいけない恋だとわかっていても今だけ、今だけ自由に育てさせてください。
そうすればきっと、結婚後夫から愛が得られなくても、無理に愛を求めるような真似をせずに済むはずだから……。
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