167人が本棚に入れています
本棚に追加
困ります。期待、してしまいます
私は今日もラウル様からいただいたイヤリングを付け、鏡の前でニヤニヤする。
イヤリングをしている間は常にラウル様を感じられて、幸せいっぱいだ。
あの日から毎週水曜日の午後に、ラウル様はやって来るようになった。
おばあちゃんの作業の進捗状況を簡単に確認し、私の仕事を手伝ってくださって、お茶をして帰っていく。
「やっぱりそのイヤリング、よく似合う」
そう微笑むラウル様に私はきゅんとなって、しゅんとなる。
だって私の本当の髪色は黒褐色ではなく、金髪。
金髪ではこのオレンジ色の石が目立たなくなってしまう。
「ダメですよ、女性にそんな甘い言葉を囁いては。相手に惚れられちゃったらどうするのですか」と意地悪く言うと、
「ははっ。心しておくよ」と屈託のない笑顔を見せる。
いや、全然わかっていないでしょう……。
毎週お会いできるのは、正直嬉しい。
私に会いに来てくださっているのかと勘違いしてしまう。
期待しちゃ、ダメ。
これは私が勝手にときめいているだけ。多くを望んではいけない。
ラウル様にこの想いを気付かれてはいけない。
気付かれたら、きっともうお会いできなくなる。
ラウル様がみえるたびそう自分に言い聞かせる私は、王女らしからぬ浅ましい女です。
最初のコメントを投稿しよう!