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最初から乗り気ではなかった?
だったら何故?
製作を依頼する時、花とお菓子を選ぶ時、ラウル様は本当にお相手を愛おしそうに思っているように見えた。
一体何があったのかなんて、私が聞くわけにいかない。
ラウル様のお顔を見つめながら色々考えていると、急に私の耳元の髪をラウル様が軽くかき上げた。
あぁ、イヤリングを確認されたのね。
私が持っている唯一のアクセサリーだからといって、ラウル様にお会いする時には必ず付けていることに私の気持ちが駄々洩れの気がして、急に恥ずかしくなった。
ふいっと私は視線を逸らす。
「……こんな事を言えば、軽蔑されるのかもしれない。多分きっと、ハージュさんを助けた時から俺はハージュさんに惹かれていた。エルマルク王子の誘いに託けて、ここに来るのを楽しみにしていた」
その言葉に、期待と不安で心臓が高鳴る。
軽蔑、なんて私も同じです。
私もラウル様がみえるのを、心待ちにしておりました。
だけどお願い、それ以上は言わないで欲しい。
「ハージュさん、こんな事を言うとあなたを困らせるかもしれないが……」
「言わないで、下さい」
その先を聞いてしまうと、私の決心が揺らいでしまう。
ぐっと言葉を飲み込むと、それがとても苦しくて涙が溢れた。
「何故泣く。何故、俺の想いを聞いてくれないのか」
「聞けば、戻れなくなるからです」
溢れる涙。震え、崩れそうになる膝。
言わせてもらえないのなら行動でとでも思ったのか、それとも私が倒れ込みそうだと察したのか、ラウル様が立ち上がり私の身体をぎゅっと抱きしめた。
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