168人が本棚に入れています
本棚に追加
ラウル様は私の身体をそっと引き離し、頬に手を当て優しく口づけする。
比べるものではないけれど、前の人生で一度だけ経験した氷のように冷たく硬いキスとは全く別のものだと感じた。
温かくて、優しくて。心がふわっと軽くなる、
これが本当のキスなのか。
もっとして欲しいとラウル様の目を見つめる私のはしたない思いを感じ取ったのか、ラウル様は優しく微笑み何度も何度も唇を重ねる。
「4カ月……残りの4カ月間、ハージュさんの人生を俺も一緒に歩んでいいか?」ラウル様が耳元で囁く。
「ハージュさんが自分の運命を受け入れるように、俺もちゃんと運命を受け入れる。そしていつか……もし生まれ変わることが出来たら、今度は絶対ハージュさんのそばにいる。貴方だけを見つめているから。どんな形であれ、どんな立場であれ……必ず貴方を見つけてみせる」
生まれ変わり……。
そうですね。
今の自分の人生を全うして、今度またやり直すことがあったら絶対に最初からラウル様をだけを選びたい。
私はゆっくり頷いた。
それからラウルは毎週水曜日の朝イチにみえて、日付が変わる頃に帰るようになった。
「少しでも長くハージュと一緒にいたいから」
私は水曜の午後は完全にお休みを取るようにして、ラウルと一緒にいられる時間を作った。
一緒に仕事をしたり、おばあちゃんから料理を習ったり、森に散歩に出かけたり……夜には星空を一緒に眺めたりした。
「手出しはしない。でも抱擁と唇だけは許して欲しい」との約束通り、沢山抱きしめ合い、沢山唇を重ねた。
今はお別れの事を考えないようにしよう、そう思うようにしてもやっぱりひとりの時は『その時』の事を考えてしまい、恐怖と悲しみのあまり泣き出してしまう。
愛されれば愛されるだけ、愛すれば愛しただけ『その時』が辛くなる。
そんな事、わかっているけど……最後の最後までラウルを好きでいさせて欲しいと強く願う。
最初のコメントを投稿しよう!