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「これ、見て」
雪がチラつくある日私は手袋を外し、小さな赤い石が埋まる右手の甲をラウルに見せた。
「何だ、これは。石が……まさかこれは『緋の誓い』というものか?」
平民には縁のない魔法だが、流石に騎士様はご存じなのか。
私は小さく頷いた。
「私の誕生日には家に戻らないと、ここから魔物が出てきて私を食べてしまうの。だから、私には『死』か『お先真っ暗な人生』のどちらかを選ぶしかないの」と言いながらフフフっと笑う。
ラウルは私の右手を取り、そっと甲に口づけをした。
「その魔物を俺が倒せば……『俺とずっと一緒にいる』という選択肢が増えるのか?」
魔物を倒す!?
そんな事、考えたことは無かった。
出来るの?可能なの?
いや、強い術者の魔物は強い。
そんな事をしてラウルが魔物に喰われてしまったら、私は一生後悔する。
「ありがとう。でも例え魔物を倒してもらっても、その選択肢は増えないよ」
「……決めているんだな」
「うん」
お父様との約束を、破るわけにはいかない。
「誕生日は……いつなんだ」
「……明日だよ」
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