困ります。期待、してしまいます

7/7
前へ
/50ページ
次へ
「これ、見て」  雪がチラつくある日私は手袋を外し、小さな赤い石が埋まる右手の甲をラウルに見せた。 「何だ、これは。石が……まさかこれは『緋の誓い』というものか?」  平民には縁のない魔法だが、流石に騎士様はご存じなのか。  私は小さく頷いた。 「私の誕生日には家に戻らないと、ここから魔物が出てきて私を食べてしまうの。だから、私には『死』か『お先真っ暗な(ラウルがいない)人生』のどちらかを選ぶしかないの」と言いながらフフフっと笑う。  ラウルは私の右手を取り、そっと甲に口づけをした。 「その魔物を俺が倒せば……『俺とずっと一緒にいる』という選択肢が増えるのか?」  魔物を倒す!?  そんな事、考えたことは無かった。  出来るの?可能なの?  いや、強い術者の魔物は強い。  そんな事をしてラウルが魔物に喰われてしまったら、私は一生後悔する。 「ありがとう。でも例え魔物を倒してもらっても、その選択肢は増えないよ」 「……決めているんだな」 「うん」  お父様との約束を、破るわけにはいかない。 「誕生日は……いつなんだ」 「……明日だよ」
/50ページ

最初のコメントを投稿しよう!

168人が本棚に入れています
本棚に追加