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お先真っ暗な人生、受け入れます
私は1年間という約束通り、自分の誕生日の夕方に王宮へ戻った。
父の部屋へ入った瞬間、『緋の誓い』の石が砕け散った。
「ふん。ちゃんと教養も身につけてきたという事か。ならば問題ない。早速今日からプライザ王国へ入国する支度を始めよ」
父は「約束の『加護石』だ。どれでも好きなものを持って行け」と、テーブルに大小色合い様々な紫色の加護石を並べた。
私は結局、前の人生で渡されたものと同じ魔力の弱い加護石を手に取った。
この子がきっと、私と一番相性がいい。
それに今の私の価値は加護だけじゃない。加護の魔法だけに頼らず、正妃としての任務を全うしたいと思う。
父の部屋から出ると、母が待ち構えていた。
「えらく色気づいた顔になったわね。まさか自由を謳歌し過ぎて、男漁りなんてしていないでしょうね」
娘に対して酷い言葉。でもわかっている、これが私の母親だ。
「ご心配なく。身体は清いままですから」
最も今後誰も私の身体に触れないので、その事実が確認されることはないでしょうけど。
母は、はん、と冷笑し私の髪色を金髪に戻す。
いっそあの髪色のままでも良いのに、と思ってしまった。
昨夜、ラウルは突然のお別れにも責めることなく、黙って私を抱きしめてくれた。
そのままラウルと一晩中語りあかし、今朝、別れを惜しむおばあちゃんの横で、笑顔で見送ってくれた。
私は一生その笑顔を忘れない。
私も涙を堪えながら、精一杯の笑顔でその地をあとにした。
帰りの列車では、ずっと声を殺して泣いていた。
どうせこれだけ辛いのなら、もっとラウルとの思い出を作りたかった。
夢のような1年間だった。
ハージュは今、ハージュリアに戻りました。
第一王子の正妃として、プライザ王国に精一杯この身を捧げます。
だから神様どうか、来世はラウルと会えるようにしてください。
私はオレンジ色のイヤリングを、レースの手袋と共に小さな巾着に仕舞った。
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