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半年が経ち、結婚式当日。
白いヴェールの下に、黒いヴェールが仕込まれた。
「……これは何ですか?もの凄く…視界が悪くなってしまうのですが」
衣装係が頷き「日光アレルギーが再発されないようにと第一王子様のご配慮です。大丈夫ですよ、常に介添人がおりますのでご正妃様は前へ進む事だけに専念していただければ良いのです」とブーケを手渡してきた。
……結婚式前日まで領地にいながら、ご配慮感謝します。
何も期待していませんからと、ため息をついた。
おばあちゃんからお祝いの品として、お兄様から直接新しい手袋が届けられた。
「幸せになれよ」
その願いは叶えられないと思いつつも、小さく頷いた。
私はそれをはめ、ブーケを持ち直す。
流石にイヤリングを結婚式へ持ち込むことは許されないだろうから、巾着は与えられた自室へ置いてきた。
「さぁ、参りますよ」
介添人の手を取り、私は教会へ向かう。
お先真っ暗、を表した黒のヴェールで足元しか見えない。
鳴り響くパイプオルガン。
聞こえる聖歌隊の歌声。
今、教会の扉が開く。
私はゆっくり一歩、一歩と前へ踏み出した。
介添人の手が離れ、夫と思われる男性の脚が視界に入った。
私は無言でその横に立つ。
神父に言われるまま誓いの言葉を交わす。
但し、その誓いは「一生プライザ王国の民を愛することを誓いますか」との内容だった。
前の人生での結婚式では、形だけでもお互いの愛を誓い合った。
今回はそれすら無かった。
そのため誓いのキスは無く、そのまま式は終了していった。
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