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声の主が私に近寄る。
「ロバート…様。ロバート様こそ、このようなところで何をなさっているのですか」
お酒臭っ!ロバート、酔っているの?
あなた、お酒苦手じゃ無かったっけ?
月明かりのせいか、口元が緩んで不気味な笑みをこぼしているように見える。
「何故、貴方はこれほどに愚かなのだ」
はぁ?急に何。
「兄上に嫁いだ時点で貴方の人生は終わったのだと言っておいたのに」
え、言われたっけ。
……言われたわ、前の人生の最後に。
「結局は兄上の鉱山が目当てなのか。残念ながら、今回も貴方の手には入らない」
採掘権を今回も私の父は望んでいるけど、私は一切触れるつもりもなかった。
「どういう事?ロバートは何かをご存じなのですか!?」
「……その呼ばれ方、久しいですね。義姉上」
くっ…とロバートが笑う。
まさか、ロバートも人生をやり直ししているの?
「なぜ、何故私達は40年以上も前に戻っているの?」
「それは義姉上が命を絶つべく服用した、あの小瓶の薬のせいですよ」
北の塔でロバートが持ってきた、あの小瓶はただの毒ではなかったのか。
「あれはクロリャ魔法国の魔法の毒なのです。服用した者を過去に戻す魔法がかかっていて…貴方が服用した後、私も服用したのです。まだ魔法が不安定とか言っていたが上手く戻った、そう思っていたのに……上手くいかないものですね」
チッと舌打ちするロバート。
魔法の水を扱うクロリャ魔法国は今まだ小国で、回復水を始めとしてこれから貿易が盛んになっていく国だ。あと30年もすればユーヴァルト国を凌ぐ程の魔法大国になるが、そんな危険な魔法に手を出していたのか。
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