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「結婚したところで財産や領地は妻のものにならないと、前に学習したでしょう!あぁ、そうか。今度こそ兄の子を授かるつもりなのですね。残念ながら、既に貴方は兄上に嫌われております。傲慢で贅沢と男が好きな王女様!兄上が貴方に触れるどころか、ひと目も見てもらえない人生が待っているのですよ!」
領地も子供の事も贅沢も、前も今も一切望んでいない。
前の人生ではロバートの助言に従っただけ。
それなのに何故そこまで言われなくてはいけないのか。
「前の人生での貴方は純粋無垢で、実に可愛らしかった!一目惚れでしたよ。59歳の貴方も儚げで実に美しかった…。今の貴方も充分魅力的ですがね、私の好みではない。ですが、兄上が亡くなった暁には側室になら迎えてあげても良いですよ。沢山、沢山愛してあげましょう」
ロバートのニヤつきに、背筋がぞわっとした。
ロバートの狙いは……私!?
まさか、前の人生でも夫が私に嫌悪していたのは……ロバートのせい?
「そうですね。いっその事、私の子を孕むというのはどうでしょう。まさか誰も兄上が正妃を蔑ろにしているとは思わないでしょうからね」
お酒の入ったオジサン思考のロバートは、理性がコントロール出来ていないのか。これは、どう考えても逃げるべきだ。
私は温室の中を見回すが、出口はロバート側にしかなさそうだった。
植物が植わった棚と棚の間は人ひとり分程度の隙間。
その棚はまたぐには高すぎて、くぐるには低すぎる。
まさか棚をなぎ倒してしまうわけにもいかないと、迷っているうちにロバートに捕らわれてしまった。
「は、な、して下さい!」
ロバートは抵抗する私の両手首をつかみ、私に迫って来る。
血走った眼のロバートから伝わるのは、もはや憎悪。
自分の人生を捨てて、もう一度やり直そうとした結果が同じでは腹も立つだろう。
だけど、そんなの私が知った事ではない!
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