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驚く私に構うことなく、父は私を執務室から追い出した。
待って。
これって今どうなっているの?
私は毒を煽って死んだのでは?
自室へ続く廊下を歩く途中、メイドに出会い今日の日付を確認する。
「石暦1430年1月21日。そういえば昨日リア様のお誕生日でしたね。何ですか、アピールですか?誰にもお祝いしていただけなかったのですか」と冷たい表情。
昨日が17歳の誕生日!?
あれ、待って。
確か私が17歳の夏頃にプライザ王国の第一王子の正妃にと、こちらから打診したんじゃ無かったっけ?
我が国にとって魅力的な鉱山がプライザ王国の第一王子の領土で発見されて、何としても婚姻関係を結びたいと父がこじつけた。
キャシャラルドお姉様は既にお嫁入りが決まっていたので、父は不本意ながら正妃教育もされていない私をプライザ王国に送り出した。
私…42年前に戻っているの?一体なぜ!?
今までの記憶が夢?
いいえ。
ぼんやりとした記憶ではあるけれど、確かに私は40年余りをプライザ王国で過ごした。向こうの国の礼儀や歴史、文化や地域、正妃や王妃としての心得も必死になって後から学んだ。
夫であるルドルフにも、愛してもらおうと努力した。
野暮ったいまま嫁いだので、流行も取り入れてロバートの助言も聞き入れて自分を磨き、妻として受け入れてもらえるよう努力し続けた……!
結局夫は、私に指一本も触れずこの世を去った。
あぁ、結婚式の誓いのキスだけ唇に触れたわね。ほんの一瞬。
そのあとあからさまに唇を拭ったのは……鮮明に覚えている。
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