168人が本棚に入れています
本棚に追加
父は私の手を取り「邪魔だ」と言って、魔法の師と私の『緋の誓い』の石を魔法で砕き解除する。
そして私の右手の甲へ新たな赤い石を押し当て、呪文を唱える。
―――バチバチバチッと右手の上で火花が散る。
その衝撃に私は顔を顰めつつも、じっと耐えた。
「教養を身につけ、期日までに戻ってくれば結婚祝いとして『加護石』をお前に贈ろう。魔法が使えないお前に多少は価値がつくだろう」
「上質の物、でお願いします」
記憶にある父から、結婚祝いだと頂いたのは質の悪い『加護石』。
これを使って私は40年間、プライザ王国の騎士たちに僅かながら加護を与えていた。
元々加護など必要のない腕前の者たちだったが……夫はそうでは無かった。
魔物討伐の指揮のために出陣するあの日夫に加護を与える時、運悪く『加護石』が砕け、効力を失った。
「あなたの加護など、呪い以下だ」
そう言い残していった夫は帰らぬ人となった。
「お前にそのような欲深さがあったとはな。良かろう。最高級の『加護石』を準備してやろう」ガハハ、と父が笑う。
「いえ、私には最高級の物はきっと使いこなせません。出来ればその場で選ばせて頂けるとありがたいのですが」
石とも相性がある。
質が悪くても40年間使い続けることができたのは、石が頑張ってくれたおかげだ。
「生意気な。まずは教養を身に付ける事からだ!どんな手を使うつもりなのか知らんが、私の手を煩わせず自力で学べ!」
えぇ、元より頼るつもりはございません。
その上、この国を出るつもりもありませんから!
最初のコメントを投稿しよう!