転生は甘くない

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 最悪だ。  マジで最悪だ。  トイレットペーパーに転生。  しかも、掃除のおばちゃんに交換されたばっかり。つまり、野郎共がクソする度に俺の寿命が縮み、また死ぬって流れ。  せめてさぁ1.5倍ロールとかにしてほしかった。ノーマルじゃん。すぐ無くなるじゃん。どうせすぐ無くなるなら女子トイレが良かったんだけど。  しかも、個室5つのうち、1番奥の端っこ。  緊急事態でない限り、ゆっくりクソするには奥がいいだろ。向かい側は掃除用のロッカー。手洗いの人の流れもないし、クソするには1番快適だろうな!  トイレットペーパーの俺は、1番早く無くなるだろうな!  いや、むしろ早く死んだ方がいいな。  トイレットペーパーはキツい。しかも会社だぞ。  ふと、俺は考え込んだ。  転生したトイレットペーパー。使う度に命が減る。芯そのものが心臓みたいなものなら、俺の最後はゴミ袋にまとめられて焼却場か?  クソでゴミか――。  クソみたいな人生とさよならしたつもりが、クソでゴミの転生って――前より酷くなってない?  そんな俺の声なんて、誰かに届くはずもなく、今日もカラカラと使われる。  おい! テメェさっき付いてなかったか!? 手に付いてなかったか!? ウォシュレット使ってからにしろー!  俺は、トイレットペーパーの芯に魂の全てを移動させている。何やってるのか自分でも分からないが、触ってほしくない。芯ならば回避できる。  マジ無理。  触んなボケ、カス、クソ。  いつまでこんなことやんなきゃなんねぇんだよ。  早く死にたい。けど、汚い手で触ってほしくない。  いっそのこと、誰かこのトイレットペーパー盗んで、どっかに捨ててくれ。
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