自殺

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自殺

  朝になった。  ジェミニは一人で目を覚ました。隣にツインはいない。  ――ツインは行ってしまった。  ジェミニは何かを決心するように起き上がり、自分の顔を鏡で見る。  夜の事は後悔はしていない。  その時だった。  家に誰かが訪ねてきた音がした。  偉い魔女の一人がジェミニの部屋にノックもせずに入ってきた。 「ジェミニ、急いで支度をしなさい」 「……何かあるんですか」  随分と急いだ様子の魔女に、ジェミニは不思議そうにたずねる。 「僕を消すのは午後のはずでは?」 「事情が変わった。お前は消さない事になった」 「どうして」  ジェミニは緊張しながらたずねる。  ジェミニの赤い目にじっと見つめられ、魔女は少したじろいだ。  そして、少し言い淀んだが、すぐに答えた。 「ツインが、自殺した。今朝、毒を飲んで自宅で死んでいるのが発見された」  魔女の事務的な声だけがハッキリきこえ、その他音は全く聞こえなくなった。 「自殺ですか」 「…思ったより冷静ですね」  魔女はそう言ってジェミニを見た、が、その表情にギョッとした。  恐ろしいほどの無表情。  不気味な赤い目が、死んだように光を失っていた。 「それで、僕は一体何をしに?」 「ツインの自殺について、大騒ぎしている者がいるんだ。ツインの母親なのだが。ツインが自殺したのは、ジェミニ、お前のせいだと喚いている。こちらとしてもツインの件は青天の霹靂で。一応お前に話を聞かなくてはならないんだ」  魔女は説明する。  その間も、ジェミニはずっと何を考えているのか分からない顔をしたまま、すっとどこか一点を見つめたままだった。 「ともかく、一緒にきてもらうよ」 「……わかりました」  ジェミニは素直に頷き、魔女についていく。  家を出る時、ジェミニの母親がチラリとジェミニを見た。 「命拾いしたのね」 「残念でしたか。僕が消えなくて」  ジェミニのその言葉に、母親は少し驚いた顔をした。 「そんなこと思ってないわ」 「え」  ジェミニは驚いて母親を見つめた。  しかし、魔女に急かされてしまい、その後何も話をすることもなく家を後にした。  ずっとジェミニは母親に疎まれていたという自覚はあった。一緒に食事をした覚えはほぼ無く、話もほとんどしなかった。  自分が邪魔なんだと思っていた。  ……いや、邪魔だったのかもしれない。しかし母親なりに一応情はあったのかもしれない。 「もう少しわかりやすい人であってほしかったなぁ」  ジェミニは魔女に付いて歩きながら大きなため息をついた。
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