近道の先は

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 「痴漢に注意」公園の前に立ててある。それを横目に  「大丈夫、私は足が速い。公園を抜けていった方が10分早く着く」 林道枝は自分に言い聞かせた。 陸上部の部活で遅くなった。早く帰って予約を忘れたドラマを見なくては 「帰りは公園の中を通ってはダメよ」母親に言われていたが仕方がない。 勉強せずにドラマを見てることがばれてしまうので頼めない。せめて弟妹がいれば頼めるのだが。 道枝は公園に入ると全速力で走り出した。街灯が少なく木々が植えてあるので夜は流石に怖い。春になると変質者が多く出る。木々が芽吹くとともに変質者も出歩くのか。 「ドン」何かに当たった? もう少しで出口なのに何なの?と思っていると急に体を押さえつけられた。 「声を出すと殺すぞ」脅す声が聞こえた。 「あー、どうしてお母さんの言うことを聞かなかったのか」心の中で思った。 男は茂みの中に引っ張って行こうとしたので抵抗した。足で股間を蹴り上げた。しかし、うまくいかなかった。恐怖で体が言うことを効かない。何とかしなければ声を出そうにも声が出ない。男が覆い被さってきた。両腕を片手で握り一方の手で自分のズボンを降ろそうとカチャカチャ音を立てていた 「キャーッ」突然悲鳴が聞こえた。 男は驚いてキョロキョロ周りを見回してる。 そうだ大きく息を吸って声を出そう。道枝は大声で叫んだ。 「火事よーーー」人は自分にも被害が出ると思って外に出ると聞いたことがあった。お願い誰か気づいてと願ってると 「誰かいるのか」声がした。懐中電灯が男の顔を照らした。 男はビックリして逃げ出した。警察官だった。 「君、大丈夫か」その声と救急車を呼ぶ声が遠くに聞こえた。 公園の公衆トイレに男がいた。どうやらもよおしてるらしい。こんな時逃げなければならないのに突然小がしたくて我慢できなくなったらしい。 しかしファスナーが下りない。それならズボンを下すかと思ってもベルトが外れない。 女の悲鳴と懇願の声が聞こえてきた。男は耳をふさいだ。しかし、自分が凌辱した女の顔も次から次へと出てきて目を閉じようとしたが閉じることが出来なかった。 男が発見された。尿失禁で目を見開いたままぶつぶつなにか言っていた。 「何か怖い者でも見たんでしょうか」 若い警察官が聞いた。 「さあな、ただ言えることはこの男に襲われた女性達が死ぬほど怖い思いをして、心に大きなトラウマを残したことだ」 道枝を助けた警察官が答えた。
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