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「邪魔邪魔!」
手洗いから戻って来た優人に蹴られてさらに泣き出す花澤学園長。
「おかえり愛内君。一緒にお寿司食べよ?」
「おうゆうちゃん!はよ来いや!」
「……ったく、何でワシが花畑学園と仲良う飯食わんといかんのじゃい」
御縁学園長と似たような顔立ちをした文句言ってるこの少年は、花屋敷学園の生徒会長の孫・雅楽代天斗。苗字が違うのは父親が母親の家に婿入りしたからだ。ついでに言っとくと花畑学園の生徒会長の宝来桜颸とは従兄弟。
「まぁ天斗、たまには良えやないか」
イライラしている雅楽代の肩を笑ってポンとやんわりたたいたのは花屋敷学園生徒会の1人で友人の宮鷹。
「あっ、会長達飲み物お注ぎします!」
「三鼓君、僕も手伝うよ」
季優と優人の幼なじみで花屋敷学園生徒会の巫と三鼓、花屋敷学園風紀委員の鎌塚が側で泣いてる花澤学園長を無視して、先輩達の隣に座り直して やんややんや楽しそうに食べたり飲んだりしてるのを見て、壊れた銅像を胸に抱えた花澤学園長は「もうやだやだやだあーーーっ!!」と激しく首を横に振り始めた。
「もうっ何だよ皆してっ!!もう良いよっ!!ふ〜んだっ!!もう知らないっ!本当にもう何かあっても知らないんだからっ!助けてあげないんだからっ!!もう1人で歌っちゃお〜っと!!」
花澤学園長は100%いっつも皆に迷惑かける上に皆を巻き込んでは助けられてる側の宇宙規模で困った奴だ。つまり問題児ジィ。
鼻頭を赤くしてぐすぐす泣きながら家庭用カラオケセットの線をテレビに繋げた花澤学園長がリモコンで選曲を入れようとすると、そこへ同じような顔で泣きながら敦君は近寄って来るなり学園長からリモコンを奪い取った挙げ句 適当な番号を入れ 泣きながらリモコンを学園長にぶつけてから泣きながら両親の所へ戻って行く。あの子いつまで泣いてたら気が済むんだろうか?
そんな敦君に「あっ、ありがとう敦君!」と花澤学園長がお礼を言った。
それからテレビ画面を振り返るなり花澤学園長はあんぐりと口を開けアホな顔になった。
理由はテレビ画面に竹内まりやの“アップル パップル プリンセス”と言う曲名が表示されていたから。そしてこの曲は1週間前の文化祭で さんざん歌わせられた曲だった。
歌い飽きてる花澤学園長は「えー…」と言いながらも竹内まりやが好きだからまたそれを笑顔で元気に歌う事に決めたらしく大きな声で歌い始めた。
そういや季優の背後霊になってから間もない頃に優人が季優に『花澤学園長は休みの日カラオケでよく歌っているらしいぜ。やべぇよな』と笑いながら言っていたのを覚えている。
てっきりカラオケボックスにでも行って歌ってんだと思ってたのに友達居ないからいっつも1人で家カラしてたらしい事を今日初めて知ったら何だか可哀想に見えてきた。
「アップル・パップル・ピップル・ポップル・ピプパペ〜 アップル・パップル・ピップル・ポップル・プピポペ〜!!」
…あの曲はもう学園長のテーマソングに決定で良いだろう、そうしよう。
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