背後霊、幽篁幽々子の珍道中

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気を取り直して広い家の中を2人の影を探して歩き回っていると2階のバルコニーに置いてあったテーブルを挟んで椅子に座って何か話している季優と椿をようやく見つけた。 あいつらこんな所に居たのか…何2人して神妙な顔つきで話してんだか…。 何だか入って行きにくい重苦しい雰囲気を感じたが、さっきも言った通り季優から離れるとまずいので静かに季優の後ろに立った。 「……1日目を終えた後だ。宝来会長と不審な人物は居ないかなどを確認するために校舎の中を歩いていた時 迷子になっていた一般客が居たから俺はその人を外に案内しに行った。それから戻って来ると1階の奥、1年のクラスがある辺りの階段前で宝来会長と雅楽代会長が向かい合って居たのが見えた。何を話しているの聞きに行こうとしたら雅楽代会長を迎えに来ていた宮鷹さんに『今は出て行かん方が()えよ』と止められた」 どうやら先週の文化祭の時の話しをしているらしい。 「宮鷹さんってしいちゃん(しいちゃん→巫の事)達と一緒にライブバトルに出ていた背が高い男性ですよね」 「あぁ。詳しくは知らないが鎌塚が言うには歌舞伎役者であり俳優でもあり目立った役柄では無いがちょこちょこドラマや映画なんかに出たりしている芸能人らしい」 「その人が何故行かない方が良いと仰られたんです?」 「俺達が出る幕では無いからだそうだ」 「え?」 「いつも笑顔を浮かべている宝来会長の顔から笑みが消えていたし、雅楽代会長は何処か怒っているような表情をしていた。宮鷹さんと一緒に廊下の陰に隠れて様子を伺っていると『絶対に負けへん』と雅楽代会長の声が最初に聞こえた。… 『あんたも充分知っとる通りワシらは生まれた時から華やかな舞台で大勢の人に見られる仕事をする事が既に決まっとって、ワシらもそれを理解し当たり前の事やと思うてずっと育って来た。ワシは書道家としてただ静かに書くだけやなくてパフォーマンスとして書道をしとる姿を派手に人前で披露し、三鼓は柔道家として、宮鷹は歌舞伎役者また俳優として、姫小松は舞踊、花山院と巫は華道家、(みぃんな)それぞれ見せる立場であり見られる立場でもある。この2つの立場を業として生きとるワシらがど素人に簡単に砕かれるわけにはいかんのや!!せやから絶対負けへん!このまま1位のまま最終決戦も勝たせてもらいます!!これがワシらのプライドやっ!!』 『………そう。気持ちは凄く伝わったよ。でもね、僕達もこのままおめおめと引き下がるわけにはいかないんだよね。例え明日挽回出来なかったとしても君達(きみたち)に認めさせるパフォーマンスを魅せてあげるよ』 『ふんっ。その言葉嘘やったら文化祭後にあんたも会長から降りてもらうで?』 『良いよ。潔く会長を辞めましょう。その代わり、僕達の…愛屋君達のパフォーマンスを素晴らしいと思ったら天斗から労いの言葉をかけに来てもらうからね?』 『はっ…なんやそれ面白(おもろ)いなぁ?()えよ。それ乗ったるわ』 ………と言う話しをされていてな」 「えっ!?じゃあライブバトルに僕達に挨拶しに来てくれたのって…」 「雅楽代会長達が貴様達を認めたからって事になるな。『なんやかっこええやないか…』って会長席で雅楽代会長が呟いてたのを聞いたって宝来会長から言われた。誰にも言うなよ?雅楽代会長にバレたらまずい」 「…っあはははっ!……良かった、僕達でも誰かに素敵だと思ってもらえるライブが出来たなら本当に嬉しいです。椿君もお母様を連れて来て下さってありがとうございました。椿君のお母様の言葉もとても支えになりました。改めて僕がお礼を言っていた事を伝えておいていただけませんか?」 「あぁしかと引き受けた」 椿は静かに頷いた。……ー“ライブバトル”。それは先週の合同文化祭の1番の目玉種目で、双方の学校の理事長から出された課題曲にオリジナルのダンスをつけて一行一句間違わずに歌を唄い、双方の学校の全校生徒・教員陣を含めお客さんとして見に来た一般客の方々から パフォーマンスが良かった方に点数を入れてもらい その合計数が高かった方がライブバトルの王者として玉座に座る事が出来ると言う 高校での文化祭ではあまり見られない珍しい出し物の事。 今年は人数が足りない宝来率いる生徒会の代わりに “何でも部”と酷く可笑しな部活動に所属している 2年の季優と優人、そして3年の花巻、愛原、黒羽が雅楽代以外の花屋敷学園生徒会メンバーと対決したのだ。そして僅差でギリギリ花畑学園が勝利を掴んだ。 今2人はその時の話しをしているところだったらしい。
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