背後霊、幽篁幽々子の珍道中

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「でもよ、マライア・キャリーの方くっかもな」 「あぁ、どうだかな」 薬袋達からようやく解放されて ぜーぜー 言いながら季優達の居る方に戻って来るなり優人は椿の隣の椅子に「あー、疲れた」と言いながらドカッと座った。 「う〜ん、どうでしょう?松任谷由実さんの“恋人がサンタクロース”とかいかがでしょう?」 「周り回ってB'z来るかもしれへんよ?“いつかのメリークリスマス”とか」 あ〜! と優人と季優が話しながらこっちに歩いて来た巫を見てポンと手を叩いた。 皆で あれか?この曲か?どれだ?と話してるとテレビ画面に“松山千春・クリスマス”と言う文字が現れた。当然皆その場でピシッと固まった。松山千春には申し訳ないが俺以外若い子達には分からない曲だったからだ。 「メリークリスマス クリスマス
白い雪が 手のひらでまた溶けて消える
 メリークリスマス クリスマス
 消えはしない 君への想い 君の姿〜♪」 皆が知っているクリスマスの曲を歌うと言っていたからそれぞれ知ってる“クリスマスと言えば”の定番曲を色々予想してたらしい。あの学園長でさえ涙を止めてぽけっとして歌を聞いている。あの顔はマジの“知らんけど?”って顔だ。 「どうじゃ?良かったであろう?お祖母様に聞いて練習したのじゃ!」 「え、えぇ!素敵だったわよ、麗花!」 「あ、ああ!良かったぜ、黒羽さんっ!」 「曲はごにょごにょ黒羽パイセン歌はめっちゃ上手かったよ!」 「とっても最高な曲でした〜!!」 結局最後まで何の曲か分からなかったけど友達だし先輩だからと何でも部の奴らだけは気を遣って馬鹿みたいに大袈裟に褒め始めた。花屋敷の奴らまで拍手してる。花屋敷(あいつら)結構 気を遣える奴らだったんだな。良い奴らじゃないか。 「まったく…これやから若者(わかもん)は……私も歌うで!皆散れ散れいっ!!」 しっしっと手で皆を払い退けて御縁はマイクを持って茜と一緒に皆の前に歩いて来た。 何だか御縁が愛人を連れて歩いてるとんでも爺さんに見えるのは俺だけだろうか?と言うかまた歌うのか(あいつ)…。 2人は腕を組んでサザンオールスターズの“エロティカ・セブン”を歌い始めた。 「「抱きしめて私は私 喉がカラカラ そんな愛こそすべて 女は女 夜もバラバラ 我はエロティカ・セブン〜♪」」 練習して来たのかってくらいハモり上手ぇな!?ってか御縁(この爺さん)もうちの学園長に負けずに気持ちだけはめっちゃ若ぇよな。本当に隣の茜みたいな女とエロティカ・セブンの歌詞にあるような恋路の都で毎晩生活してそうに見えなくもない顔してるから何だか本当にそうなんじゃないかって疑わしくなってきたわ。 「よ〜しっ!気を取り直して僕ももう一回歌おうっと!!」 学園長(おめぇ)はもう良いだろ。誰も聞きたくねぇよ。皆帰った後に1人カラオケしてろよ。 御縁達が避けた後に学園長が今度こそ本当に歌いたい曲をリモコンで入れようとしたら「僕が入れてあげる!」とまた敦君に取り返されて勝手に番号入れられた。そんでもってまた画面に現れる竹内まりやの“アップル パップル プリンセス”。「あ〜〜〜ん!!」と学園長は困った声を出したが、 「アップル・パップル・ピップル・ポップル・ピプパペ〜 アップル・パップル・ピップル・ポップル・プピポペ〜!!」 笑顔で元気にちゃんと歌った。 大勢が見てる中でこんなに同じ曲歌い続ける度胸のある奴なんてこの話しを書いてる作者の5歳離れた弟くらいだ。ちなみに弟が歌い続けた曲はジブリの4分18秒もある“となりのトトロ”だ。彼は自分にマイクが回ってくるたび誰の助けも要らず唯一1人でも歌えるトトロのサビだけをトットロトットロと一生懸命歌っていたらしい。ちなみにこの話しは当時弟が8歳だった時の話しらしい。学園長が歌ってる曲も もうそろそろ皆歌覚えちゃいそうだ、と言うかサビは完璧にもう歌詞を見なくても俺は歌える。 「なぁなぁせっかくやし、雅楽代会長はんと宝来会長はんで歌いはったらいかがです?」 唐突な巫の思いつきに な''っ!? っと2人の頭の上にピシャーンッ!と雷が落ちたようだ。 雅楽代にいたっては手に持ってた湯呑みを床に落としている。
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