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18話
♡ ♡ ♡
彼の体に迎えられて座る。後ろから抱きすくめられる。緊張で体が震えかけている。左の耳元で、ゼイツ准将が口をひらく。ぞくっとして、彼の腕につかまる。低い声が耳の中に侵入してくる。歯を私の耳にひっかけたまま、唸るようなため息を吐く。感じてるみたいないやらしい吐息に、たったこれだけで視界が一瞬白くなる。
「……っ うぅ……っ」
シーツをけって耐える。
ずりおちる私の体を、准将が抱きしめて引っ張りあげる。
声をがまんすると、吐息ばかりが激しくなって、もうだめなのに、ゼイツ准将はやめてくれない。
耳元でちゅっちゅっと音をたてて私をおかしくしていく。
――たくさん気持ちよくしてやるから。
ゼイツ准将の言ってくれたことが忘れられないの。
私、気持ちよくなっていいの? 声、たくさん出していいの?
ふと、彼の手が私の口にそっとかぶさった。
四階でドアを閉める音がした。
声、聞こえちゃうよって、教えてくれたんだ。現実に引き戻されて、私は喘ぐのを止めた。
「気にしなくていい」
ゼイツ准将が囁く。静かにしなきゃいけないのに、首筋を舐めあげていたずらしてくる。
「うぅ いじわるしないで……」
返事の代わりに彼が笑う気配がする。温かな左手が私のふとももを開かせる。
下着の中にさしこまれた指が液体に滑るのを、私も感じた。
「なんでこんなに濡れてんだ……?」
答えられない私の胸がドクドクと上下している。
指がかき混ぜはじめて、私は顔が熱くなった。感じる場所ぜんぶ、知られてるみたいな動きだった。
すぐにでも達してしまいそうで、気づけば准将のひとさし指を強く噛んでいて、いけないと思って歯を離した。すると彼は親指を口の中に挿れてきた。私は夢中でそれをしゃぶった。しゃぶって、強く吸いながらイッてしまった。
「はぁっ はぁっ あっ」
私は息を切らせていた。
「ハッ……ハッ……」
ゼイツ准将も息を切らせていた。私の肩に顔をうずめていた。
燃えるような彼の体温を感じる。
「……」
熱すぎる手が背中を這って、羽の引っこんだ穴に触れた。
そこに口づけされて、舌をねじこまれ、私はあわてて膝立ちになった。
羽が背筋の内側をツッとおりてくるのを感じた。お尻の左右へと逃げていくみたいに動いた。
「どうした」
「羽がなんか変」
「変って?」
「わかんない……」
もういったのに、彼が何をしようとしているのかわからない戸惑いもあった。
私の腕を引いて仰向けに寝かせ、彼は床におりて私の足を開かせようとする。
「何するの……?」
「あと一時間で日付がかわるから明日の分もやっちまう」
…………言い方それでいいのですか?
というかあと一時間も私、がまんして声おさえなくちゃいけないの……? 考えただけで酸欠になりそうだった。
私は体をひいて、足元にいる彼から距離をとった。
「ゼイツ准将は、いいんですか?」
「何が?」
「その、……ならなくていいんですか。私ばっかり、なってるから……」
経験ないけど、ゼイツ准将の感じる場所に私も触れたい。喜ばせてみたい……、うまく、いえない。
「私も、ゼイツ准将に気持ちよくなってほしいです」
そう言うと、間があった。意味わかってくれたかなって、顔をじっと見ていると、彼はうつむくようにして立ち上がり、ベッドから離れた。
「俺にそんな必要ないだろ」
何とも言えない表情で腰かけるゼイツ准将を見ているうち、
私は死にそうになってきた。
やばい、盛大に間違えた。
これは救命のためだったんだ。なのに私、恋人同士みたいなつもりになっちゃってた。
「それより約束しろ。今後、今日のように困ってもエリアスに助け求めたりすんなよ?」
「?」
♡ ♡ ♡
「ウシナウ草が入ってたから飲んだ?」
そう聞き返したゼイツ准将は、考えてもみなかったらしい、そういうことかと驚いてさえいた。
「だけど、新鮮なのが必要なんじゃなかったのか」
「あ、覚えててくれてありがとうございます。保険として飲んでおいて、部屋から出ないつもりだったのですが」
私、エリアス様に救命を頼むために惚れポーション飲んだと思われてたみたい。
「エリアス様は婚姻関係にあるわけですし、たとえご夫妻が不仲だと聞いても、そんな事しません……」
「まあそうだが、命には変えらんねーだろ……」
ゼイツ准将がうなじに手をやって、何か言いたげにする。
「俺はてっきり、フェルリナが俺に腹を立ててるんじゃねえかと」
「私が? どうして?」
「なんつーか、俺と……キェーマの話を聞いて嫌になったのかと思ったんだよ」
そう吐き捨てるゼイツ准将は恥じらってるみたいだった。私は彼の赤くなった耳を見ながら尋ねた。
「まだお付き合いがあるとか」
「ねえよ。まあいいや、そういや軍部の情報局に草のこと問い合わせたら、……ほら」
准将が携帯端末をいじり、セイヨク=ウシナウ草のページを見せてくれた。その記載にはこうあった。
〝けっこうその辺に生えてる〟
「あれっ!?」
私は口をあけた。昨日見せてもらった時は、〝フェアリーアイランド山地にのみ棲息。めったにみられない〟みたいに書いてあったのに。
「な? アテにならねえだろ?」
「そうですね……でもこっちの方が希望が」
たしかにてきとうだけど、私にとっては朗報だ。やっぱりアバウト先生は正しかったんだ。
あとは探すだけだけど、一体どこを探せばいいんだろう。
「生えてるところ思い出したから、明日連れて行く」
「え!?」
私は耳を疑った。飛びつくように彼を見た。
「どこですか!?」
ゼイツ准将はニヤリと悪い顔をしてみせた。
「俺の地元だ。覚悟しろよ」
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