21話

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21話

         ♡ ♡ ♡ 「なぁ……フェルルン聞いてる?」 「!?」 「くくくっ」 笑ってる! なんか肩揉まれてマッサージされてる! 「真面目な話するとな、これから草探しに行って、万が一見つからなかった場合はそのままバーズへ顔出すだろ。そうなったら零時までに帰れるかわからない。だから今ここでしておいた方がいいと俺は思う」 胸に()れそうになった彼の手がそこをさけた。 「こここっ、ここでするの?」 「じぶん家なんだから文句言われる筋合いないだろ。……いや、一人いるか。けど迎えに来ねえ方が悪い」 「……??? きゃっ」 ゼイツ准将(じゅんしょう)が私を垂直に持ちあげて、着替えていた部屋へ入る。 蒼っぽい壁紙と学習机が目に飛びこんできて、低いベッドに座らされる。准将が私に覆いかぶさりタイツを探り当てて、脱がそうとする。私は焦ってそれを引っ張りもどした。 「待って下さいっ。聞いてっ お願いっ」 ふとももに口を近づけた准将が目をあげる。 「私……っ、准将のこと尊敬してるんです……!」 唐突(とうとつ)に変なこと言っちゃった。 彼は眉をひそめてそっぽを向いた。 不意打ちして照れさせちゃったみたいだけど、私が伝えたいのはそうじゃなくって、 「ここってゼイツ准将の子供の頃からのお部屋ですか?」 「ああ」 「で、でしたら、私」 ここには私の知らない准将がいっぱいある。 ベッドサイドに座った私の前には、床に膝ついた彼。 その後ろにチェストがある。引き出しは全部閉まっている。彼が子供の頃から使ってきたものだ。 やっぱりここで一日一回のアレをするのは…… 「(けが)しちゃいそうで、申し訳ないっていうか」 「じゅうぶん(よご)れてるから気にすんな」 と、彼は引き続きタイツを下ろす作業に入った。 「意味わかって下さいました!?」 「気が乗らねえっつーんだろ? だったらその気にさせるまでの勝負だ」 「そんな失礼な事言ってな……どうして勝負になるのっ???」 タイツをあげるかさげるかの争いが始まった。 「そんなに引っ張らないでっ」 「そっちが手ぇ離せよ」 「伸びちゃうってば!」 「邪魔すんな」 「邪魔っておかしいでしょっ」 こ、こうなったら、タイツに(おとり)になってもらうしかない! 急に動いた私は回りに何があるかもわからずに、頭をぶつけた。 「いたっ」 「あ、ばか」 攻防がやんだ。 ゼイツ准将が私の頭に手を当てて、起こしてくれた。 彼はチェストを背にあぐらをかき、ぼそっと話した。 「今夜、親父とウェンディがいる時にするのは嫌だろ? 一人でするっつーなら止めねえが、もしもの時、助けてやれるかわかんねーぞ」 うっ……。 そうだった。 私、ワガママ言えるたちばじゃないんだった。 昨日も一人でするとか言って結局できなくて、迷惑かけちゃったし……。 ゼイツ准将のご厚意で、シていただいてるんだ私……(泣)。 「観念するか?」 「ハイ……」 「よし。そこでだ、この状況にうってつけのプレイがある」 彼は後ろ手に引き出しを開けて、しゅるりと何かを取りだした。    
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