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22話
♡ ♡ ♡
彼は黒いネクタイを取りだした。
「これで目隠しすれば、そっちに集中できる」
目隠しされた状態でHな姿を晒すなんて、逆にハードルが上がりすぎて、逃げ出したい。
でも、これ以上わがまま言えない……。
「マント脱いでもらっていいか。触るつもりはねーが……」
「……あ、あ、はい」
胸を触るつもりはないって言われてるんだ。
ゼイツ准将は私にキスしたり、裸にしたりなんてことはしないようにしてくれてる。
強引なようで、
ほんとは凄く気を遣ってくれてる。
女の子として興味がないって言われているようでもあって、
情けなくって、恥ずかしいんだ。
私はうつむきがちにマントを脱いだ。
「顔あげろ」
この時点で恥ずかしさが極限に達しそうだった。
ネクタイのサテン生地がひんやりすべる。
両目と鼻を覆われ、後頭部できゅっと縛られると私は口をあけた。
今まで見えていた室内がなくなって、生地の端から光を感じる。
目を閉じても開けても変わらない黒い世界に、鼓動が速まる。
「あの……」
「俺はここにいる」
彼の服が擦れ、骨が微かにパキッて鳴る。私の前にしゃがんでいる気配。
「この服、エリアスが贈ったやつか?」
「……そうです。?」
私は黒のミニドレスの裾をひっぱった。
ナポレオンマントに合って、なおかつ、急にご家族にお会いした場合でもおかしくないようなのはこれしかなくて。
一応肩は隠れてるけれど、スカート丈は短い。
「あいつ、自分の趣味で選んでんだろ……」
「……変ですか?」
「いや別に」
どうしよう……今どこを見られてるんだろう……。
ギシッ
ベッドが軋む。
マットレスが凹み、准将が私の背後に座る気配。
「…………」
何をされるのかわからなくて、うなじの辺りがゾワゾワする。
だけど、視界を塞がれてから、
部屋にあるものが見えなくなってから、
あれこれ考えていたパニックにも似た緊張が、ふしぎにも無くなっていた。
「ゼイツ准将?」
「うん?」
「これって猛獣を大人しくさせる時の技ですよね? 目隠しすると暴れなくなるってい」「そういうことだな」
かぶせ気味で返事がきた。
やっぱりそうなんだ。すごい効果あるんだわ。
急に抗う気持ちがなくなったもの。
「羽触っても問題ないか?」
「? あ、はい」
どこを触られるのかじっと待っていると、
コショコショ
右の上翅の脈をくすぐられた。
コスコス
サワサワ
「くふふ。……きゃんっ。あははっ」
場所を変えていろんなところをこすられて、私は身をくねらせた。くすぐったくて笑っちゃう。同時にえっちな声がでてしまう。
「あんっ」
私はベッドカバーをつかむように手をついて、お尻をつきだして、背中を反らせていた。
触れられてるのは背中の羽なのに、下半身の奥がきゅんきゅんしている。
「羽、意外と急所なのか?」
「……くすぐったいだけです……」
ふだん、たとえば木の葉に翅が擦れたとしてもこんなに感じない。
でも今は、触れられるたび素直な声がでてしまう。
カリカリ
「ひっ……///」
「ここは?」
尾状突起(翅の一番下のしっぽみたいなところ)を、キュッと指先ではさんで離されて、私は思わず大きな声をあげてしまった。
「あ゛っ」
羽が体へ入っていく。
それを追いかけるように、准将が口をひらいて脈を舌でなぞると、
もう片方の羽が動いて、ヤメテと言うように彼の頬に優しくかかる。
「舐めない方がいいのか?」
「たぶん、歯が怖いんだと思います」
「怖い? 羽にも意思があるのか?」
「みたいです……たまに不思議な動きをするから」
「へええ」
まじめな相槌が聞こえて、肩の力が抜ける。
ゼイツ准将が私に興味持ってくれるのうれしい。
たとえそれが、私自身にではなくて、種族に対してだとしても。
「場所変えるぞ」
ギシッ
ベッドが軋んで、ゼイツ准将が床におりたのがわかった。
開けっ放しだった口を私は閉じた。
今たぶん目の前に准将がいて、次の何かをしようとしてる。
この隙に、私は今まで言えなかったことを伝えたくなった。
「ゼイツ准将」
「うん?」
「仕事でこんな不純な事したくないはずなのに……いつも申し訳ないなって思ってます」
「……」
「強引に誘ってくれるのも、私に恥かかせないようにしてくれてるんですよね……なのに、ワガママ言っちゃってごめんなさい」
少し、間があった。沈黙にたえきれず、私は足をぱたぱた動かした。
面と向かっては言えないことも、目隠ししてると言えちゃった。
「気にするな」
と返事がきた。
「俺は自分の為にやってるだけだ。妖精の精力剤に勝てれば、俺はもっと強くなれる。訓練の為にやってんだ」
私はネクタイの下で瞬きをした。
「本当?」
「ああ」
訓練……。私、ゼイツ准将の役に立ててるの?
「私、ゼイツ准将の誇り、穢しちゃってないの?」
「大丈夫だ。それより寝かせるぞ」
頬に指先が触れてぴくっとする。耳に髪をかけてくれたゼイツ准将が、私を仰向けにした。
あ……。
何かがおしりの方へ伝った。
私の脚のあいだで、彼が鼻を啜るのがきこえた。
どうしよう、やだ、なんか……。
脚を閉じようとすると、もっと大きく開かされた。私の隠したいものに、なぜか彼は気づいてしまった。伝った愛液を舐めとられ、舌がおしりの穴に近づいて、私は腰を浮かせて逃げた。
「わかった、やらねーから」
と彼はやめて、ズッと私の腰を引き寄せた。
「手、くれ」
あったかい手が私の手をとってくれ、互いの指を握りあう。私の裸足は彼の肩に乗っている。この人の体は、燃えるように熱い。
チュッ
と内ももにキスされた。
また間があって、
チュッ
チュッ
音に耳を犯されるようだった。
ふいにゼイツ准将が鼻息を立てて、開かせた私の脚に体重をかけて押さえてきた。舌の先っぽがパンツの上からそこをなぞった時、私は悲鳴をあげた。繰り返し舐めあげられて、突き上げるようにいってしまった。
◇ ◇ ◇
腕を引かれて起こされて、ネクタイをとってもらう。
目の前に准将の脚があって、その時私は、あれっと気づいた。
彼がパッと動いたから、長くは見ていられなかった。
え、何いまの、もしかして……勃起?
わからないけど、
明らかに迷彩パンツの形が不自然だった。
うそ……わたしなんかに興奮してくれてたの……?
ゼイツ、准将……
私は唇をかんで彼の顔色をじっと見あげた。
彼は手早くネクタイをまとめて、引き出しにいれようとして開かなくて、ガタガタひっぱったあげくネクタイをほん投げた。
「なんでそんな顔すんだよ?」
彼は部屋の入口に背中を押しつけ、
腕組みして私を睨んだ。
「大体ジョニーは何で来ねえんだ? もう四日経つんだぞ」
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