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「なるほどね、それだけ大きな想いじゃ東雲は断れなかったんだ」
「うるさい、そういう連はどうなのよ。ラブレターの代筆なんて柄じゃないでしょ」
「そうなんだけど、僕も同じようなものだよ。前から気にしていた子がいるらしくてね。何とか会話のきっかけが欲しいんだってさ」
なんとまぁ、この学校奥手なのが多くないか?
一日で2人も似たような内容で代筆するなんてそんな事ありえるか?
「ふーん、それなら連はなんて書くの?」
「僕ならそうだな、相手の事を考えてから書くかな」
「それで書ける物なの?私は無理だったけど」
「僕はこういうのは得意だからね、それに東雲にはまた別のやり方があると思うよ」
そう言って蓮は机に向かってまた文字を書き連ねていく。
ここら辺のやり方は変わらないと思いながら私は蓮が言った事を反芻する。
(私なりのやり方、私なら何て書くか……)
机を前にして唸っていたが、その時ある考えが脳裏に浮かんだ。
私は春原さんが秋葉君に宛てたラブレターだと考えていた。
だけどまず前提として二人はお互いの事をほとんど知らない。
となれば求められているのはいきなり告白することではなくて、その為の場所を作る事ではないんだろうか?
(きっと春原さんは自分で告白したいはず、それなら私が書くべき言葉は)
私もペンを手にしてノートに幾つか文章を書いて行く。
その上でようやくしっくりとくる文章が見つかったため、それをレターセットに認める。
後はこれを本人に直接渡すだけだ。
「どうやら書けたみたいだね、東雲」
「えぇ、おかげさまでね」
「僕の方も書けた、これならきっと喜んでくれるよ」
いや書くの速すぎないか?
私しばらくここで唸っていたんだけど?
なんだか立つ瀬が無いんだけど?
「ねぇ、もしかして蓮ってそう言うの慣れてる?」
「まさか、これが初めてだよ」
あっけらかんと蓮は返す。
まったく、とんだ伏兵がいたものだよ。
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