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「蓮、もう帰ったんじゃなかったの?」
「うんまぁそのつもりだったんだけど、作品の事で部長に呼び出されてね」
あぁ、エイケンのあれか。
蓮が夏休みを利用して撮影した映画は密かにエイケンこと映像研究会で話題になったらしく、その事で色々蓮も苦労してるみたいだ。
「あー、ご愁傷様。それで今開放されたところ?」
「それもあるんだけどまた別の要件で捕まってさ」
そういう連の手にはノートが握られている。
それにわざわざここに来たってことは何かあるってことだ。
「もしかして、ラブレターの代筆でも頼まれた?」
「怖いな、なんでわかったの?」
「私もだからだよ、似たような考えなら分かるよ」
そう言ってノートを見せびらかす、まぁ私のはすっからかんだが。
とはいえ一人で唸っていてもどうにもならなかったところだ。
3人寄れば文殊の知恵とは伊吹が言ってるが、知恵を借りるとしよう。
「ところで連は代筆できてるの?進捗いかが?」
「出来てないよ、というか頼まれたのはさっきなんだ」
「なるほど、つまり私とおんなじと」
どうしたもんか、泥船に乗り込んだのが二人に増えただけだった。
蓮もそんなの断ればいいのに、まぁ人の事を言えた義理ではないけど。
蓮ははにかみながら隣の椅子に座る。
本来なら別の持ち主がいるのだがまぁそれは言わないでもいいだろう。
そのままその上でノートを広げた。
「思うんだけどさ、なんでラブレターの代筆なんて頼むんだろうね。好きなら自分で言えばいいのに」
「それはそうなんだけど、でも断れなかったんでしょ?東雲も」
「……そうだよ、あんなの見せられたら断れなかったよ」
さっきまでの光景がまだ目に浮かんでいる。
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