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下流で発見された宗一郎は詐欺師として逮捕された。
水緒と隣町の洋装の女性だけでなく、もっと上流の街の女性も、下流の街の女性とも結婚の約束をしていたことが判明。
街の再開発計画はもちろん白紙。
川の蛇行を変える工事も中止、よみがえった桜並木は植え替えの必要もなく、もちろん水緒の家を宿泊所に建て替えるという計画もすべて中止となった。
◇
二年後、満開の桜並木を歩く新郎新婦は多くの街民に祝福された。
新郎は竜神。
美しい銀色の長髪に、川のような青い眼。
それなのに着物に違和感がない姿はさすがこの地をずっと守ってくれた神。
大洪水の時に街を救ってくださった竜ノ川の主の仮の姿だ。
新婦は代々、祠を守ってきた地主一族の娘。
幼い頃、祖母と祠の掃除をしていたことを年配者たちは知っている。
着物がよく似合う、凛とした姿勢の美しい娘だ。
「竜神様、街を救ってくださってありがとうございます」
「水緒の側にいたかっただけだ」
白無垢も良かったが、色打ち掛けもよく似合うと微笑む青い眼は優しい。
「……でも、我が家が神社になってしまったのはなぜなのでしょう?」
水緒は川の横に立つ我が家を見ながら首を傾げた。
普通の古い日本家屋だったはずなのに、家の前には鳥居ができている。
鳥居を寄贈したのは、隣街の洋装の女性の父。
娘が詐欺師と結婚しないですんだのは、竜神様のおかげだと寄贈されたそうだ。
たった二年しか経っていないのに、家を守るかのように木が生い茂り、空気が澄む不思議な空間に。
「一部改装すると伝えたはずだが?」
「あれは改装、というのでしょうか?」
たしかに雰囲気は変わっていない気もするが、日本家屋が神社に変わるなど誰が予測できただろうか。
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