第11章 叙情

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第11章 叙情

 俺の思惑通り、女性たちからいいねがつく。それを見て俺もいいねを返し、メッセージを送る。   〈週末にでもお茶しませんか?〉    恋活だったらメッセージのやり取りを重ねていくのだろうが、俺の目的は違う。      そうして俺は誰とでも体を重ねていった。    何人と寝たかなんていちいち数えない。    ……ただ、再びメッセージを送ってくる女性はいなかった。      ……別にいいさ、記憶にも残らない女ばかりだった。      そんな中、自ら会いたいと言ってきたのが心愛だ。   〈はじめまして。本能的に魅かれました。よろしくお願いします〉    18歳、写真はバリバリ加工の地雷メイク。    プロフィールには一言、【ご主人様募集しています】      うわあ! と俺は声を出してしまう。    スルーしかけたものの、からかうのも面白いんじゃないかとも考えた俺は早速返事を出した。   〈いいねとメッセージ、嬉しいです。本能的に魅かれちゃったんですか笑笑〉   〈はい。ご主人様になってもらえますか?〉    メイドかよ。   〈いえ……〉      彼女の話をまとめるとこう。    自分は被虐的なプレイが好きであり、元カレと主従関係を築いてきた。だがその男性を失ってしまい、新しい相手を探している。      なるほど、そういう設定なのか。    イタそうだし、もう切り上げよう。   〈ごめんなさい。無料メッセージの上限になってしまいました〉      返事はこないだろうと思ったが、彼女はメッセージアプリのIDを送ってきた。    アカウント名には「心愛」と書いてある。    暇を持て余した翌日の昼頃、俺はIDを追加し、返事を送る。   〈ID教えてくれてありがとう。心愛さんてなんて読むんですか?〉    差し障りのない質問をしてみる。   〈ここあです。ここあと呼んでください〉      ここあだって? 一瞬猫のココアを思い出す。近々実家に帰ってみようか。     〈いつ会えますか?〉   〈今の緊急事態宣言が解除されたらお願いします〉      その日から俺たちはメッセージを交わすようになる。    18歳のM嬢とは奇妙な話に思えたが、彼女の一文一文は丁寧だ。    毎日のやりとりが増え、次第におやすみなさいと送り合うことが習慣になっていく。    いつの間にか俺は、心愛と会える日をワクワクしながら待つようになった。      緊急事態宣言が解除されたあと、渋谷ヒカリエで心愛と待ち合わせる。      心愛はストレートな黒髪を腰のあたりまでのばしていて、写真より大人びて見える。俺より顔2つほど低いから身長は150くらいだろう。    黒いワンピースにコルセットを重ね、コルセットからは細いチェーンがいくつも連なっている。ワンピースのスカート部分には安全ピンやフェイクジッパー。そしてレースのアームカバーにリストバンド。      俺たちはカフェでフラッペを飲みながら、その後の行動を話し合った。   「私はこのままホテルに行きたいです」    心愛は落ち着いて言う。      俺も今日が来る前にSMもののAVを観て感覚を掴んでいる。    そして女性をいたぶりたい俺にはS役が向いていると確信していた。    俺は心愛をスタイリッシュなホテルに連れて行き、女子ウケしそうな和モダンな部屋のパネルを押す。フロントでキーを受け取ると、エレベーターに乗る。  そして心愛の手を取り部屋に入ると、心愛のワンピースのファスナーを乱暴におろして、そのまま黙ってベッドに押し倒す。     「急に何をするんですか!」    はだけそうになった胸を押さえながら心愛が俺を睨む。   「こういうのが好きなんでしょ?」   「違います! やめてください!」    俺を押しのけながら心愛がいう。     「待ってよ、俺はちゃんとAV見てきたんだよ」    なんとか心愛をなだめようとすると、心愛はため息をついた。     「一方的な性行為はSMでは絶対認められませんよ? イメージだけで作られた一般人向けのAVなんて信用しないでくださいよ」
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