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嫌だ。怖い。離して。助けて―――
そう脳内で繰り返し、目を瞑ったときだった。
鈴木「……ごめん。強く言いすぎた。」
そう言ったように聞こえ、驚きと疑問から目を開けると、主人の大きな手がゆっくりと離れていくのが見えた。それに合わせて、全身の力が抜けていく。
ドクドクと大きな音をたてる心臓と、いつもより少し早い呼吸の音が脳内に響き渡る。
鈴木「ごめんな?……ほら、ゆっくりでもいいからこっちおいで。」
主人とは思えないような、優しく包み込むような目でこちらを見ながら、そっと両手を差し出してくる。
一瞬だけ目があったかと思えば、軽く首をかしげて笑顔になる。それに合わせて黒い髪が揺れ、白衣に留められたネームプレートが傾く。
不思議とその行動に安心して、一瞬のうちに身体が軽くなったような気がした。
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