1人が本棚に入れています
本棚に追加
部屋の外から学校のチャイムが聞こえる。
空はすでにオレンジ色で、大きな校舎や一軒家を綺麗に染めている。
そんな街の中を、制服を着た学生数人が歩いていく。
楽しそうに笑いながら青春を過ごしている。
それを横目に、今日も狭い牢獄の中で一人過ごしている。
俺は狼に生まれた"不運"な男だ。
大体のヒトが十歳で人間の姿に変わるのに、俺は人間になれず今年で十五だし、狼に生まれたのに血液検査の結果は手駒だった。
それだけじゃない。俺は親といろいろあって失望されて、殴られたり蹴られたり―――されたあと捨てられて。挙句の果てに、こんな場所に連れてこられた。
そんなことを考えていると、この部屋に一つしかない扉の反対側から、聞き覚えのある足音が聞こえてきた。
もうとっくに慣れたはずなのに、脚が震えだし、口の中は水分を失っていく。
『トントントン』という音が静かな部屋に響き、スライド式の扉が開く。
?「……入るぞ。」
白衣を着た男が部屋に入ってきて、扉を閉めてから俺に近づいてくる。
―――体に力が入らなくて、その場に崩れ落ちる。
近づいてくるのが嫌で、怖くて目を閉じたいのに、目を閉じることすら、離すことができない。
胃液がこみ上げてきて、目元に涙が浮かぶ。
食いしばった歯は震え、口の端からは飲み込みきれなかった涎が垂れる。
最初のコメントを投稿しよう!