第一話

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第一話

―――この世界は不思議だ。 ヒトは人間の姿で生まれず、その人の性格や容姿に添った動物の姿で生まれてくる。 例えるなら、見た目が可愛い人は兎や猫。 背が高くガタイの良い人は熊や鷹の姿で生まれてくる。 熊や鷹などの力のある動物に生まれた人は主人(オーナー)といい、犬や猫、兎などの動物に生まれた人は手駒(ペット)といわれる。 手駒は主人に逆らえず、主人を傷つけると吐き気や頭痛に襲われるものの、本人の気持ちとは関係なく、本能から主人を嫌ってしまう。 それを治すには、手駒と主人が信頼関係(タッグ)と呼ばれる関係になるか、解除薬を飲むしかない。 手駒が主人の左手の薬指を噛み、信頼関係を組むと、動物のままのヒトは人間の姿になり、相手の主人に恐怖心を抱かなくなる。そのかわり、長くても五日間で手足などの形や内臓や骨の大きさや形が変化するため、身体のいたる箇所が痛む。 市販の解除薬はいくつかあるが、効き目は人それぞれで、体質や慣れで効かなくなることもある。 また、解除薬は一度の服用で体に大きな負担がかかり、月に三回服用するだけで亡くなることも少なくはない。 ……俺は、そんな薬に一週間に一回は世話になっている。
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