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「ラスト1体は?」
「みんなと合わせよっか。でも観察は満足したよ」
「だろうな……。いつもよりロングだったし」
ロングだった……かな?
「ええー」
「ほら、やるぞ」
さっきと同じようにアスターは体に力を込め、いつでも準備はできているという顔をした。今回はとっとと燃やしちゃおう。
「いいよ」
「──────フッ!」
またすごい音と砂埃をセットに、アスターは人を超える。今回はさすがに気付かれてはいたものの、純粋なパワー差で幽霊は袈裟斬りにされ、鮮血が飛ぶ。
「ひ、ぎぃぃいいいあああ゛あ゛!!!」
ストレートな痛みに、鼓膜が破れそうなほどに幽霊が叫ぶ。そんなに叫ばなくてもいいのに。
「ミゲル!」
「燃えろッ!!」
炎の渦が、高速で、渦を巻きながら幽霊に近付いていく。
痛いのに、動けないのに、というか動いたら痛いのに、前から絶望がにじり寄ってくる。
絶望する顔が見たいのに、あまりにも炎が大きすぎたのか、僕の目には大きな大きな炎の渦と、呆れるアスターの顔しか映っていない。
惜しいなぁ。運が悪いなぁ。
「あ゛ぎゃああああああ゛あ゛ッ!!!あ゛づい゛ッ!あ゛づい゛よ゛お゛ッ!!!」
どんどん火力を上げていく。
僕の魔力が切れるか、焼き終わるか。どっちが先なんだろうね?
「うわ……バルディの炎以上だな」
アスターは最後だからなのか、その場でしっぽをいじりながら感想を述べた。
ドラゴンソウルより上?えへへ、褒められちゃったなぁ。
「────あ゛……ああ……あ…………」
声が聞こえなくなった。やっと終わったんだ。
…………終わった?
──いや、終わってない。
まだ、ううん、見たことある。
羽蟲みたいで、僕やアスターと同じくらいに大きい。
肉っぽい大きな蝙蝠のような羽、硬そうな体……甲虫って言うの?そんな感じ。下半身が完全に虫だ。
腕らしき部分は、カニみたいに関節肢が数組ついている。いや……カニさんに失礼かな。なかなか気持ち悪い見た目をしているし。だって一番最初に脳に飛び込んできた情報は「うわっ、気持ち悪っ」なんだよ。
顔はさらに見ていられないほどのもので、短いウネウネの触手がいっぱい、いっぱいついている。その奥には渦のような形の楕円形がある。
そして、僕と同じ──パッションピンク。
同じ色だなんて、ああ、なんてことだ。嘆かわしい!
……こんなにまじまじと観察するほど、気持ちのいい生き物ではないし、前に戦ったときなんか、ノータイムで襲いかかってきた。しかも複数で。だから敵なんだ。敵なのに……なんで、見ていられるの。
それよりも、まさかこんなところにもいたなんて!ここじゃ、みんなが!!
………………あれ?みんなは?
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