死んでしまった!

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 キョロキョロと辺りを見渡す。  いつも戦いが終われば「終わったー!」と伸びをしたりとみんな自由気ままに笑い合うのに、その姿が見えないし、聞こえない。  あるのは、『カチカチ』という硬いものが当たる音と、『ブーン』という羽音。そして荒くなっていく僕の呼吸音だけ。  生々しい、生き物の音。 「み、みんな、にげて……」  誰が聞いているかわからない。  誰が近くにいるかわからない。  もしかすると何かの攻撃を受けて、互いを認識できていないのかもしれないというどこにあるのかもわからない希望に縋り、みんなを逃がそうとする。  魔力はさっきたくさん使ったから強いのをあまり出せないし、恐怖で体は震えて声になっていたのかさえわからない。  ──え、これ、相当マズいんじゃ? 「!!」  1匹がこちらに気付き、見たことのない黒っぽい霧を放ってきた!  しかし前回はそんなものは見ていない。やってきたとしても、その凶悪なまでに鋭い爪で引っ掻いて攻撃をしてきたりするくらいだった。物理攻撃ばかりしてくるような敵が、こんな魔法みたいなことをしてくるはずがない。  それでも、攻撃してきたことには変わらない。僕はそちらに魔法を放った。 「水よ!」  前回はありがたいことに割と普通の魔法で対応することができた。なら、今回も行けるはずだ。  ──キィン! 「!?」  魔法が発動する音がした。 「そっ、そそそ、そんなわけっ!!」  これはバリアの一種の音だ。  バリアは発動する時、外から干渉してくる魔力を拒絶する。その時に金属のような音が鳴る。  もちろんその魔法の種類を退けるためには、それぞれの術式が必要だ。なので必要な魔力は相当なものになる。しかし治癒魔法の方が魔力が必要になるので、怪我するくらいならバリアを張る──そんな戦法を取る方が賢い。  でもこの生き物に、そんな上等な魔法が扱えるのか? 「とにかく──殺さなきゃ!」  ここで殺さなきゃ、みんなのところに行ってしまう!  それだけは、避けないと! 「燃えろ!燃えろ燃えろ燃えろ!みんな燃えてしまえ!!水よ!沈んでしまえ!!」  左手に炎、右手に水。とにかく殺すことを考えて撃ちまくる。 「はやく──はやくはやくはやく!!当たれ当たれ当たれェッ!!」  ──が、全然当たらない!  左右に避けたり、弾かれたり、バリアで守られたり!  全く倒せる気配がない。  それどころか、当たる気配もない!  どうしよう。どうしよう、どうしようどうしよう!  一発でも当たればそれで良いのに、その一発が当たらない!  無慈悲に突きつけられる事実に、僕の頭はどんどんパニックになっていく。  息も荒くなるし、狙いはどんどんおかしくなっていく。  勝てる確率は、目に見えるレベルで下がっていってる。 「い、嫌だ……やだ……!こんなところで死ねない!こんなところで、あ、あああああああーーーッ!!」  僕は悲鳴のような叫び声を上げ、威嚇ともつかないものを絞り出す!  ──ドン!ドン!ドカン!! 「助けてッ!助けて!近寄らないで!死ね、死ね!死んでしまえエエエエッ!!!は、ハ、ハハハハッ!!アーッハッハッハッハッ!!」  支離滅裂な言葉を口走りながら魔法を放つ!  ──ギュゥン!  ──ドボボボボボ!  変な魔法も混ざる。  頭が機能停止している今では、もう魔力がただ漏れ出しているだけ。  魔力は一度体から離れると、持ち主の制御から脱してしまう。その魔力がどうなるのかは、まったくもって未知数だ。  ──爆発なんて魔法あったっけ?  と思う余裕も無い。  自分が自分じゃないくらいにふわふわしてて、それでいて魔法を放つことに快感も覚えた。 「あ──ハハ………………はえ?」  ────どうして、彼らは反撃してこないの?  ふと、思った時にはもう────  ──遅かった。
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