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はじまり
昔々、とある国の王様が言いました。
「余は不老不死になりたいが、それはちょっとよくばりな気がするから、せめて健康で寿命が伸びる薬を作ってくれ」
朝晩規則正しく寝て、運動して、バランスよい食事をしないで薬に頼るんかい、と臣下は思いましたが、王様のたってのお願いなので、国中の魔法使いたちに御触れを出しました。
その国の魔法使いだけではなく、隣の国も、そのまた隣の国も広まって、自分こそは、と作り始めました。
その国の山奥のそのまた奥地に、かつて宮廷魔道士だった魔法使いが住んでいました。権力争いとか人間関係が面倒くさくなって、さっさと引退して山奥に引っ込んでしまいました。
彼の実力を慕う者が訪ねてくるうちに、弟子をとって育てるようになりました。何人かは育成して立派に独立しましたが、ある弟子だけはなかなか卒業に至るところまで上達しません。
今回の御触れはその山奥にまで届きました。元宮廷魔道士は言いました。
「私を実験台にしていいから、寿命が伸びる薬を作りなさい」
弟子は張り切りました。これは千載一遇の好機、と腕を振るったのでした。
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