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ピストルの砲口が、ひと塗りの空を見据える。
冷や汗がたらり、地面に吸収される。
自分をまっすぐに見つめる、無数の目、目、目。
遠く、仲間同士で交わされている、米粒みたいであるはずの言葉が、声が。重なり、反射し合い、合体し。巨大な化け物みたいに、俺を飲み込もうとする。
パン、という破裂音に突き動かされ、俺は逃げるように走った。音の化け物は唸りながら、空気を、世界を裂くようにして、追いかけてくる。
たった百メートル、十秒の戦い。
そこに俺たちは、すべてを賭けている。
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