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「藤堂樹です。約束通り、千夏さんに相応しい男性になって帰ってきました」
「んっ…!?」
「久しぶりの千夏さんの唇、相変わらず甘いですね」
「へっ…?」
頭をガシッと押さえられたと思ったら、そのまま彼のほうにグイっと引き寄せられて、強引にキスされた。
彼とは初めてキスをするはずなのに、なんだか懐かしいような……。
彼とのキスは初めてじゃない…。今まで忘れてしまっていただけ。私にとっては思い出したくない記憶だったから。
「藤堂さん」
「千夏さん、どうしましたか?」
「今更どんな顔して私の前に現れたんですか!?」
私は藤堂さんの胸板を押し、拒否するように距離をとった。
6年前の藤堂さんは今とは身なりも…お世辞にも綺麗とは言えなかった。どちらかといえば小汚い。それが第一印象。
私がそう感じるのも無理はない。出会った頃の藤堂さんはその場暮らしの…所謂ホームレスだったから。それが何故、童話に出てくるような王子様みたいな見た目に変わっているの?
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