再会したスパダリ社長は強引なプロポーズで私を離す気はないようです

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私が保育士をする前…ただのスーパーのバイトをしていた時、私は藤堂さんと出会った。 最初は同情からだった。バイトの帰り道、捨てられた仔犬のような格好でうずくまっていたから声をかけて、それから一時的だが私のアパートで一緒に暮らした。 それなりに仲も深まり、私も藤堂さんのことを異性として気になり始めたころ、藤堂さんは突然私の前から姿を消した。せめて次の行先くらい手紙に残してくれたら良かったのに…と私は嘆いた。 私の手料理を食べ、十分な睡眠を取れたから、私は用無しってこと? そんなの、あんまりだ。それとも他の女が見つかったのか。本人に聞こうにも家を出て行ったあとで聞けずじまいだった。 私は藤堂さんという存在を記憶から完全に抹消していた。思い出すだけ私が辛い思いをするだけだから。それなのに、藤堂さんは再び私の前に現れた。私は会いたくなかった。 「6年前はすみませんでした。突然いなくなって千夏さんも驚きましたよね」 「…」 驚くどころか、私にとってはトラウマだ。そのせいで男性に不信感を抱いて、あれから恋人はおろか、男性の影すらない。私はもう28歳。本来なら交際よりも結婚を本気で考える年齢だ。なのに過去が邪魔して前に進めない。
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