懐かしき歌声が響き渡る  

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数日のちの別れの日が来る事など 知ることもなしに 愉しげな時間はずっとずっと続くとばかりに思っていた 「外国の寄宿学校に入学するの」 「え」 「春まで、のんびり出来ると思ってたのだけど…」 「父さまの仕事もあるし 言葉や習慣に早く慣れた方がよいから… 寄宿学校の近くの街に住む事になってしまったの」 「今まで有難うヨハン」 彼女はそっと僕の頬にキスをした まもなく 彼女達は近くの町の汽車に乗り継ぎをする為に馬車に乗る 「元気でねヨハン」 見送りに来てた他の子供達にいつも遊びに行ってた お祖父さんが笑いかける 「また、会いたいものだな」不思議な表情を浮かべてる 「また明日の向こう側で会いましょう」 意味不明な謎めいた言葉を投げ掛けるメアリー 彼女が去った後の事 「メアリーに渡しそびれた贈り物をパリの住所宛てに送んただけどね 宛先不明で戻ってきたんだ」 「そうか」とお祖父さんは揺り椅子に座ってそう言った 「もう、誰もワシとお前しか彼女の事は覚えておらんよ」 パイプに火をつけてお祖父さんは言う 「あの包んだ絵を見てごらん」 「20年前にワシが描いた絵だ」 「これ!」 「20年前からメアリー・は、あの少女の姿のままだ」 「最初に会った時には、この村に来て一緒に聖歌隊で歌を共に唄っていた ワシの方が少々背が低く 会うときには、厚底の靴を履いたもんさ」 「次に会った時には、二十歳過ぎの時、パリの街角だった」 「彼女はこう言ったさ 私を誰かと間違えておられるのかしら? それとも叔母かお祖母さんによく似てると言われるの  なんて・・ね ハンス、明日の向こう側で、また会えたわ」 「そういって 彼女はにっこりと笑いかけてくれたよ」 「パリでは、馬車に跳ねられそうになった所を助けてくれたよ 他にも何度も危ない所を助けてくれた 不思議な少女さ」
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